第四章 第五十話 対話編
CASE 不妄 の裏に 妄語
マナミ 妄語に関する、天の法は、どういうものなの?
マサシ 天の法とは、言で欺いたら、言で瞞かれるよ。
マナミ この天の法を、認めない人は、どう考えるの?
マサシ 言で欺けば、自らが得をすると、捕えるのさ。
マナミ この天の法を、見とめる人は、どう考えるの?
マサシ 言で瞞けば、自らが損をすると、捉えるのさ。
マナミ 天の法を、認められたら、欺かなくなるの?
マサシ 我がために、言で欺く人は、消えてくるけど、
人々のために、言で瞞く人が、現れてくるよ。
マナミ 我がために、欺かない人は、どう考えるの?
マサシ 先に得しても、後で損すると、捕えているよ。
マナミ 他のために、瞞ける人って、どう考えるの?
マサシ 先に損しても、後で徳すると、捉えているよ。
マナミ 欺いたら、瞞かれて、自ら損を受けるけど、
他のために、欺いたら、其の損が徳になるの?
マサシ うん、損を厭わない、広大な心が、徳なのさ。
マナミ う~ん、欺けば得する、そう考えてないの?
マサシ 君は、是までの道を、辿って来てないのかい?
大丈夫、そういう人に、この道は解かないよ。
マナミ ……………………
CASE 不妄 の先に 妄語
サトシ 欺かない階、不妄って、どういうものかな?
マサシ 不妄とは、我がためには、欺かない戒なのさ。
サトシ 我がために、瞞いていると、どうなるのかな?
マサシ 穢れが集まり、内が汚くなり、外が浄くなる。
サトシ 我がために、欺かないなら、どうなるのかな?
マサシ 汚れを捨てて、内が清くなり、外が穢くなる。
サトシ 瞞かせる階、妄語って、どういうものかな?
マサシ 妄語とは、世のためには、瞞かせる界なのさ。
サトシ 世のために、欺かないなら、どうなるのかな?
マサシ 役が滞るから、我が清いまま、世が穢いまま。
サトシ 世のために、瞞いていると、どうなるのかな?
マサシ 役が巡るから、我が汚くなり、世が浄くなる。
サトシ せっかく、我が汚れを、外に投げ捨てたのに、
今度は、世の穢れを、内に受け容れていくの?
マサシ そうだよ、自分だけが、幸せなら良いのかい?
サトシ 良いよ、僕が戒を守って、器を磨いたんだ。
マサシ この先は、世の界を護って、器を広げようよ。
サトシ 嫌だよ、器を開けてたら、器が汚れちゃうよ。
マサシ そうかい、そんな人に、その先は解かないよ。
サトシ ……………………
CASE 不妄 という 妄語
サトミ あんた、世のためなら、欺いて良いなんて、
到底、認められない、法を解いているそうね。
マサシ これは、天人の教えで、天の法が前提にある。
サトミ 天が司る、前提の法って、どういうものなの?
マサシ 言で欺けば、霊に瞞かれる、ということさ。
それを前提に、嘘が広まれば、どうなるかな?
サトミ 欺いたら、瞞かれるし、何も分からなくなる。
マサシ だからって、正さないと、誤まったままだよ。
サトミ それでも、あたしはイヤよ、誰か糾してよね。
マサシ 信じるなと、世間に訴えたら、どうなるかな?
サトミ 嘘を信じたい、人々から見たら、それこそ嘘。
マサシ だからって、直さないと、過まったままだよ。
サトミ それでも、あたしはイヤよ、誰か糺してよね。
マサシ 迷妄の中で、真理を解いたら、どうなるかな?
サトミ 誰も聞かずに、皆から嫌われる、でしょうね。
マサシ だからって、説かないと、解けないままだよ。
サトミ それでも、あたしはイヤよ、誰か説いてよね。
マサシ 我が身しか、考えに入らない、君は近づくな。
この法は、治める側の教え、天の訓えなのさ。
サトミ ……………………
CASE 妄語 と 不妄 と 宝剣
マサシ 嘘を重ねる、妄語は、どういうものですか?
アキラ 妄語とは、欲に負けて、言を破ることである。
マサシ 我がために、霊を欺くと、どうなりますか?
アキラ 言で瞞かれる。霊を通して、欲が損に変わる。
マサシ 嘘を控える、不妄は、どういうものですか?
アキラ 不妄語は、欲に勝って、言を守ることである。
マサシ 皆のために、霊を護ると、どうなりますか?
アキラ 言が守られる。霊を透して、欲が得に換わる。
マサシ 嘘を活かす、宝剣は、どういうものですか?
アキラ 宝剣とは、欲を越えて、言を司ることである。
マサシ 他のために、霊を瞞くと、どうなりますか?
アキラ 言が閊えない。霊を徹して、欲が徳に替わる。
マサシ たとえ、一時的に、我が言が疑われようと、
最終的に、正されるなら、霊を汚すのですか?
アキラ たとえ、部分的に、我が言が憑かれようと、
全体的に、質されるなら、霊を穢すのである。
マサシ その器こそが、宝剣の眷属、風の菩薩ですか?
アキラ 逆説的だが、適っているから、叶わなくなる。
宝剣の一族は、虚偽と真実、その両界を司る。
マサシ ……………………!!
CASE 妄語なき不妄 と 不妄なき妄語
サトミ 不妄と妄語、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 欺かない解、不妄って、どういうものかな?
メグミ 不妄とは、自我のために、霊を守らせる戒よ。
サトミ 瞞かせる解、妄語って、どういうものかな?
メグミ 妄語とは、自然のために、霊を巡らせる界よ。
サトミ 不妄を望み、妄語に臨まないと、どうなるの?
メグミ 妄語なき不妄なんて、霊が溜まるだけなのよ。
サトミ じゃ、霊を守るばかり、霊が巡らないのかな?
メグミ そうよ、霊が偏らされて、霊が腐っていくよ。
サトミ 妄語を望み、不妄に臨まないと、どうなるの?
メグミ 不妄なき妄語なんて、霊が漏れるだけなのよ。
サトミ じゃ、霊が巡るばかり、霊を守らないのかな?
メグミ そうよ、霊が均らされて、霊が流れていくよ。
サトミ 不妄だけでは、言に縛られ、霊に疲れるし、
妄語ばかりでは、言が破られ、霊に憑れるの?
メグミ うん、不妄と妄語、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、妄語を究め、不妄を極めていくの?
メグミ そうなの、不妄を超え、妄語を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 楽 変 化 天
マサシ 楽変化天、第五天界は、どういうものですか?
アキラ 第五天界は、神通を司る、天人の住居である。
マサシ 兜率天の上に、どんな神が、住まうのですか?
アキラ 化楽天が住まい、神通をして、欲望を適える。
マサシ どのような仕組で、神通を発揮するのですか?
アキラ 言霊である、真言を用いて、色界の型に拠る。
マサシ 化楽天に、適わないものなど、無いのですか?
アキラ 全てが適う、人が想像する所の、極楽である。
マサシ 化楽天が、頂点ではないのは、何故ですか?
アキラ それさえも、彼らが望んで、適えられている。
マサシ わざわざ、頂点に仕える道を、選んでいると?
アキラ いや、それについては、尋ねるべきではない。
マサシ 時が来ました、真実とは何か、示して下さい。
アキラ 考える限り、欲を叶えたら、後は飽くばかり。
想像せよ、その断末魔は、地獄の比ではない。
マサシ これ以上は、何も望めない、絶望の中の絶望。
アキラ それゆえ、天魔に仕える道を、喜んで選ぶ。
マサシ 極楽ゆえの、極上の皮肉に、何を思いますか?
アキラ 我は、天魔に支えようか、衆生に仕えようか。
マサシ ……………………
CASE 第 五 天 界
サトシ あのね、第五天界って、どういうものかな?
マサシ それはね、霊を司るもの、欲界の天界なのさ。
サトシ 天を通さず、霊が偏るほど、どうなるのかな?
マサシ 欲が強い者に、霊が占められ、霊が腐るのさ。
サトシ 天を徹して、霊が広がると、どうなるのかな?
マサシ 欲が深い者が、霊に絞められ、霊が蘇るのさ。
サトシ 欲の世界は、放って置くと、その良く故に、
霊が腐るから、霊を管理する、天界が有るの?
マサシ その通りさ、偏り過ぎると、霊は令になるよ。
サトシ 具体的に、悪人に対して、何を行っているの?
マサシ 不実な者が、人心を集めて、操らないように、
嘘を吐く者に、霊を憑かせて、乗っ取るのさ。
サトシ 具体的に、善人に対して、何を為しているの?
マサシ 誠実な者が、霊言を信じて、踊らないように、
霊が憑く者に、嘘を吐かせて、足を掬うのさ。
サトシ 自ら考えず、霊を信じたら、悪人と同じなの?
マサシ そうだよ、妄言も霊言も、理を辿ってないよ。
サトシ う~ん、霊を信じなさいと、霊が言ったけど。
マサシ こうして、霊が布いてしまう、それが令だよ。
サトシ ……………………