第四章 第五一話 対話編
CASE 不飲 の裏に 飲酒
マナミ 飲酒に関する、天の法は、どういうものなの?
マサシ 天の法とは、酒に酩ったら、酒に酊されるよ。
マナミ この天の法を、認めない人は、どう考えるの?
マサシ 酒で酩えば、自らが得をすると、捕えるのさ。
マナミ この天の法を、見とめる人は、どう考えるの?
マサシ 酒で酊えば、自らが損をすると、捉えるのさ。
マナミ 天の法を、認められたら、酩わなくなるの?
マサシ 我がために、酒で酩う人は、消えてくるけど、
人々のために、酒で酊う人が、現れてくるよ。
マナミ 我がために、酩わない人は、どう考えるの?
マサシ 先に得しても、後で損すると、捕えているよ。
マナミ 他のために、酊える人って、どう考えるの?
マサシ 先に損しても、後で徳すると、捉えているよ。
マナミ 酩うなら、酊わされ、自ら損を受けるけど、
他のために、酩うなら、其の損が徳になるの?
マサシ うん、損を厭わない、広大な心が、徳なのさ。
マナミ う~ん、酩えば得する、そう考えてないの?
マサシ 君は、是までの道を、辿って来てないのかい?
大丈夫、そういう人に、この道は解かないよ。
マナミ ……………………
CASE 不飲 の先に 飲酒
サトシ 酩わない階、不飲って、どういうものかな?
マサシ 不飲とは、我がためには、酩わない戒なのさ。
サトシ 我がために、酊っていると、どうなるのかな?
マサシ 穢れが集まり、内が汚くなり、外が浄くなる。
サトシ 我がために、酩わないなら、どうなるのかな?
マサシ 汚れを捨てて、内が清くなり、外が穢くなる。
サトシ 酊わせる階、飲酒って、どういうものかな?
マサシ 飲酒とは、世のためには、酊わせる界なのさ。
サトシ 世のために、酩わないなら、どうなるのかな?
マサシ 役が滞るから、我が清いまま、世が穢いまま。
サトシ 世のために、酊っていると、どうなるのかな?
マサシ 役が巡るから、我が汚くなり、世が浄くなる。
サトシ せっかく、我が汚れを、外に投げ捨てたのに、
今度は、世の穢れを、内に受け容れていくの?
マサシ そうだよ、自分だけが、幸せなら良いのかい?
サトシ 良いよ、僕が戒を守って、器を磨いたんだ。
マサシ この先は、世の界を護って、器を広げようよ。
サトシ 嫌だよ、器を開けてたら、器が汚れちゃうよ。
マサシ そうかい、そんな人に、その先は解かないよ。
サトシ ……………………
CASE 不飲 という 飲酒
サトミ あんた、世のためなら、酔って良いなんて、
到底、認められない、法を解いているそうね。
マサシ これは、天人の教えで、天の法が前提にある。
サトミ 天が司る、前提の法って、どういうものなの?
マサシ 酒を飲めば、色に呑まれる、ということさ。
それを前提に、薬が有ったら、どうするかな?
サトミ 飲んだら、呑まれるし、あたしは使わないわ。
マサシ だからって、遣わないと、効能が分からない。
サトミ それでも、あたしはイヤよ、誰か使ってよね。
マサシ 誰か使った、麻薬が有ったら、どうするかな?
サトミ 飲んだら、中毒で苦しむし、絶対に呑まない。
マサシ すると、他を犠牲にして、知恵を得たわけだ。
サトミ それでも、あたしはイヤよ、誰か試してよね。
マサシ 皆が脅える、未知が有ったら、どうするかな?
サトミ 誰かに勧めて、様子を見てから、判断するわ。
マサシ 自ら進んで、叡智に尽そうと、思わないかな。
サトミ それでも、あたしはイヤよ、誰か進めてよね。
マサシ 我が身しか、考えに入らない、君は近づくな。
この法は、治める側の教え、天の訓えなのさ。
サトミ ……………………
CASE 飲酒 と 不飲 と 法輪
マサシ 酒に溺れる、飲酒は、どういうものですか?
アキラ 飲酒とは、欲に負けて、智を破ることである。
マサシ 我がために、幻に酩うと、どうなりますか?
アキラ 智が鈍くなる。幻を通して、欲が損に変わる。
マサシ 酒を禁じる、不飲は、どういうものですか?
アキラ 不飲酒は、欲に勝って、智を守ることである。
マサシ 皆のために、幻を断つと、どうなりますか?
アキラ 智が守られる。幻を透して、欲が得に換わる。
マサシ 酒を活かす、法輪は、どういうものですか?
アキラ 法輪とは、欲を越えて、智を司ることである。
マサシ 他のために、幻に酊うと、どうなりますか?
アキラ 智が鋭くなる。幻を徹して、欲が徳に替わる。
マサシ たとえ、一時的に、我が智が曇らされても、
最終的に、晴れるのなら、幻を負うのですか?
アキラ たとえ、部分的に、我が智が鈍らされても、
全体的に、冴えるのなら、幻を纏うのである。
マサシ その器こそが、法輪の眷属、空の菩薩ですか?
アキラ 逆説的だが、覚めているから、醒められない。
法輪の一族は、酩酊と覚醒、その両界を司る。
マサシ ……………………!!
CASE 飲酒なき不飲 と 不飲なき飲酒
サトミ 不飲と飲酒、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 酩わない解、不飲って、どういうものかな?
メグミ 不飲とは、自我のために、智を守らせる戒よ。
サトミ 酊わせる解、飲酒って、どういうものかな?
メグミ 飲酒とは、自然のために、智を巡らせる界よ。
サトミ 不飲を望み、飲酒に臨まないと、どうなるの?
メグミ 飲酒なき不飲なんて、智が溜まるだけなのよ。
サトミ じゃ、智を守るばかり、智が巡らないのかな?
メグミ そうよ、智が偏らされて、智が腐っていくよ。
サトミ 飲酒を望み、不飲に臨まないと、どうなるの?
メグミ 不飲なき飲酒なんて、智が漏れるだけなのよ。
サトミ じゃ、智が巡るばかり、智を守らないのかな?
メグミ そうよ、智が均らされて、智が流れていくよ。
サトミ 不飲だけでは、智に縛られ、痴に堕ちるし、
飲酒ばかりでは、智が破られ、痴に落ちるの?
メグミ うん、不飲と飲酒、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、飲酒を究め、不飲を極めていくの?
メグミ そうなの、不飲を超え、飲酒を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 他 化 自 在 天
マサシ 他化自在、第六天界は、どういうものですか?
アキラ 第六天界は、知恵を司る、天人の住居である。
マサシ 化楽天の上に、どんな神が、住まうのですか?
アキラ 天魔王が住まい、他者をして、欲望を適える。
マサシ 神通を用いて、化楽天が、作り出すのですか?
アキラ 自分も出来るが、意図的に、他に供養させる。
マサシ しかし、なぜ、恣意的に、迂回するのですか?
アキラ いや、それについては、尋ねるべきではない。
マサシ 時が来ました、真実とは何か、示して下さい。
アキラ 第六天界が衆生、第五天界が菩薩の型となり、
欲界の頂点で、欲界と色界を演じ続けている。
マサシ 化楽天に、色界の役を譲り、極楽を与えて、
天魔は、欲界の役を司り、皆苦を引き受ける。
アキラ 誰も介さずに、誰にも解されず、ただ一人、
地獄に堕天して、地獄の蓋を塞ぐ、係である。
マサシ 支配欲により、仏陀を危める、悪魔ではない?
アキラ 逆に聞こう、そんな愚かなこと、君はするか。
マサシ しません、だからこそ、長年、疑問でした。
アキラ 人の間にも、愚かな事を、天の魔がしようか。
マサシ ……………………
CASE 第 六 天 界
サトシ あのね、第六天界って、どういうものかな?
マサシ それはね、智を司るもの、欲界の天界なのさ。
サトシ 天を通さず、智が偏るほど、どうなるのかな?
マサシ 欲が強い者に、智が使われて、智が腐るのさ。
サトシ 天を徹して、智が広がると、どうなるのかな?
マサシ 欲が深い者が、智に遣われて、智が蘇るのさ。
サトシ 欲の世界は、放って置くと、その良く故に、
智が腐るから、智を管理する、天界が有るの?
マサシ その通りさ、偏り過ぎると、智は痴になるよ。
サトシ 具体的に、悪人に対して、何を行っているの?
マサシ 狡猾な者が、知恵を使って、扈らないように、
我が強い者を、我が僕にして、組み込むのさ。
サトシ 具体的に、善人に対して、何を為しているの?
マサシ 高潔な者が、知恵に囚われ、驕らないように、
善に拘る者を、悪の徒にして、抱き込むのさ。
サトシ 智に捕われ、善に拘ったら、悪人と同じなの?
マサシ そうだよ、狡知も既知も、智を固めているよ。
サトシ う~ん、善に拘り続けても、良い気がするな。
マサシ こうして、智が病んでしまう、それが痴だよ。
サトシ ……………………