物語編
第四章 第五二話 物語編
第四章 善行 と 悪行
第五二話 突き詰める善 と 突き詰める悪
[ところで、仏陀に会いたいのって、本当なの?
どうして、早く言わないの、隣の家の人がそうよ。
十年前、彼方の所に、私を寄越したのは、彼だもん。]
無邪気な、真理の言葉を聞き、我が耳を疑った。
自我の外に、仏陀は望めないと、解かっていたが、
それがまさか、こんな近くに、仏陀が居られたとは。
[彼は、私の幼馴染だけど、魂は古いみたいよ。
十歳の時、彼に言われて、彼方を呼びに来たけど、
お兄さんは、私が言う前に、出掛けちゃったもんね。]
[今日は、会える筈と言われて、来てみたけど、
本当に、帰って来ているんだから、驚いちゃった。
今度こそ、引き合わせたいから、一緒に着いて来て。]
彼女に連れられ、訪ねた家から、出て来た者は、
姿形は全く違うが、紛うことなき、あの男だった。
そして、それは同時に、間違いなく、あの方だった。
泣き崩れ、跪く私の頭の上に、手が載せられた。
頭から、優しい光が注がれ、傷つく体が癒される。
私の魂は、胸を飛び出すほど、歓喜に打ち震るえた。
魂が、全てを察していて、言葉が要らなかった。
そこは、如何な理由も、如何なる道理も要らない、
絶対の歓喜に溢れる、魂の終着点に他ならなかった。