物語編
第四章 第五三話 物語編
第四章 悪行 と 徳行
第五三話 受け容れる損 と 受け容れる徳
〔名乗ろうと思えば、いくらでも、名乗れたが、
どうして、仏陀を名乗らなかったか、汝に解るか。〕
「我を信じる者に、名乗った処で、我を信じる故に。」
〔然り、我が信じたい、善き名の仏は信じるが、
逆に、我が信じたくない、悪い名の仏は信じない。
斯くも、我が侭な信をして、仏陀に至れる訳がない。〕
〔私は、汝に染み着いた、我を諦めさせるため、
其方が説いた、顕教の善悪を覆す、密教を解いた。
その結果、今生、汝が刻印した、業が剥ぎ取られた。〕
〔はっきり言っておく、汝は、前生からの菩薩。
しかし、今生の君は、法を布いて、業に敷かれた。
汝の法は業となり、今生、生まれた、意味を忘れた。〕
〔はっきり言っておく、私は、前世からの導師。
この汝との出会いは、前世において約束したもの。
忘れはしても、破られはしない、契約の成就である。〕
〔さあ、今に生まれた意味を、思い出すが良い。
汝の転生に、与えられている名とは、玄妙なる徳。
智徳よ、今生もまた、果たすべき、天の命を果たせ。〕
懐かしい法の名を聞いて、内なる法が甦り始めた。
封印された記憶が解放され、全てが一つに繋がった。