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物語編

第四章 第五四話 物語編

第四章    金剛   と   胎蔵
第五四話 突き詰める界 と 受け容れる界

 

智徳よ、命を懸けて、天の教えを求めに来た、
汝に対して、秘密にして、金剛の教えを授けよう。
天上の教えは、地上の教えとは、真逆の関係にある。

 

地の人は、欲界の下にあり、上を望みやすい。
それゆえ、欲に溺れやすく、欲を制する表の教え、
つまり、五戒を守らせて、天界に導く、顕教を説く。

 

天の人は、欲界の上にあり、下に臨みやすい。
それゆえ、慢に陥りやすく、慢を御する裏の教え、
つまり、五仏を護らせて、色界に導く、密教を解く。

 

善多き、天で顕教を説けば、善に驕りやすく、
悪が蔓延る、地で密教を解けば、悪に染りやすい。
どちらも、使い方を誤まれば、地獄に落ちるだろう。

 

顕教を説きたければ、人間に生まれるべきで、
密教を解きたければ、天人に生まれるべきである。
境界を犯せば、人は天に甘え、天は人に驕り始める。

 

其れ故、人界と天界の間に、四天王を置いた。
彼らは、地の法と天の法が、入り混じることなく、
天と地を、分け隔てるために、法を護り続けている。

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