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物語編

第四章 第五四話 対話編

CASE 金剛 の裏に 胎蔵

 

マナミ ヴァジラ、金剛界って、どういうものなの?
マサシ 金剛界とは、大日如来の、智の象徴のことさ。
マナミ どうして、金剛石の如くが、智を表わすの?
マサシ 堅固な念で、思いのまま、突き詰めるからさ。
マナミ ガルヴァ、胎蔵界って、どういうものなの?
マサシ 胎蔵界とは、大日如来の、徳の象徴のことさ。
マナミ どうして、母胎に蔵するが、徳を表わすの?
マサシ 慈悲の心で、在りのまま、受け容れるからさ。
マナミ 諦めずに、突き詰めるほど、智が研かれて、
    諦めて、受け容れるほど、徳が磨かれていく?
マサシ うん、直ぐ諦らめても、実は構わないのさ。
    しかし、諦めず粘るほど、智徳が培われるよ。
マナミ いつでも、諦めて良いのは、気が楽になるね。
    出来る限り、耐えてみようと、前向きになる。
マサシ 精一杯で良い、それだけで、随分と楽になる。
マナミ こんな、良い話、もっと、早く知りたかった。
    どうして、今まで、わたし、聞けなかったの?
マサシ この良さが、解かるまで、耐え抜いたのさ。
    粘りに粘って、智が生じて、徳を招じたんだ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 金剛 の先に 胎蔵

 

サトミ 動を表わす、金剛って、どういうものかな?
メグミ 金剛とは、智と慧を司る、男性原理のことよ。
サトミ 欲を持って、動き続けると、どうなるのかな?
メグミ 思いのままに、突き詰めると、輪廻するのよ。
サトミ あらゆる転生を、積み重ねると、どうなるの?
メグミ 最終の転生に、如来としての、生を迎えるよ。
サトミ 静を現わす、胎蔵って、どういうものかな?
メグミ 胎蔵とは、慈と悲を司る、女性原理のことよ。
サトミ 空を以って、止り続けると、どうなるのかな?
メグミ 在りのままに、受け容れると、涅槃するのよ。
サトミ あらゆる衆生を、愛し慈しむと、どうなるの?
メグミ 現在の転瞬に、如来としての、命を授かるよ。
サトミ 動と見ると、転生を望んで、如来を迎えて、
    静と見るなら、衆生に臨んで、如来を向える?
メグミ そうよ、我が体験として、突き詰めていき、
    その裏で、皆の経験として、受け容れていく。
サトミ そっか、誰も彼もが、大日如来の化身であり、
    手分して、役を演じて、体験しているわけか。
メグミ うふっ、そうなのよ、だから、受け容れてね。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 金剛 という 胎蔵

 

サトシ 如来の智慧、金剛界は、どういうものかな?
アツシ 金剛界は、良くを持って、突き詰める界だな。
サトシ 欲を持って、輪廻を解して、智慧を培うの?
アツシ 輪廻を嫌わず、済度を通して、涅槃に達する。
サトシ 輪廻の中にこそ、涅槃が有ると、見とめるの?
アツシ 智慧が有れば、転生の最中に、空性を認める。
サトシ 如来の慈悲、胎蔵界は、どういうものかな?
アツシ 胎蔵界は、解くを以って、受け容れる界だな。
サトシ 徳を以って、煩悩を介して、慈悲を培うの?
アツシ 煩悩を厭わず、済度を徹して、菩提に変える。
サトシ 煩悩の中にこそ、菩提が有ると、見とめるの?
アツシ 慈悲が有れば、衆生の胸中に、仏性を認める。
サトシ 輪廻を嫌うなら、完全な涅槃に至れないし、
    煩悩を厭うのなら、完全な菩提に到れないの?
アツシ ああ、否定をすれば、差が埋まれてしまう。
    完全に、悟りたいなら、悉く認めるしかない。
サトシ 金剛界は、輪廻即涅槃を悟る、智慧を研き、
    胎蔵界では、煩悩即菩提を悟る、慈悲を磨く。
アツシ そして、最終的には、大日如来だったと悟る。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 胎蔵なき金剛 と 金剛なき胎蔵

 

サトミ 金剛と胎蔵、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 表に現れる、金剛界は、どういうものかな?
メグミ 金剛界は、欲で偏らせて、動き続ける界だよ。
サトミ 裏に隠れる、胎蔵界は、どういうものかな?
メグミ 胎蔵界は、徳で均らして、止り続ける界だよ。
サトミ 金剛を望み、胎蔵に臨まないと、どうなるの?
メグミ 胎蔵なき金剛なんて、唯の虚像に過ぎないよ。
サトミ じゃ、突き詰めようと、受け容れないのかな?
メグミ そうよ、動き続けるだけ、摺り抜けていくよ。
サトミ 胎蔵を望み、金剛に臨まないと、どうなるの?
メグミ 金剛なき胎蔵なんて、只の死蔵に過ぎないよ。
サトミ じゃ、受け容れようと、突き詰めないのかな?
メグミ そうよ、止り続けるだけ、封じ込めているよ。
サトミ 金剛だけは、智を具えても、徳を研けないし、
    胎蔵ばかりは、徳を備えても、智を磨けない。
メグミ うん、金剛と胎蔵、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、胎蔵に依り、金剛に拠っていくの?
メグミ そうなの、金剛を究め、胎蔵を極めていくの。
サトミ ……………………!!

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