物語編
第四章 第五六話 物語編
第四章 寂静 と 憤怒
第五六話 穏やかな形相 と 恐ろしい形相
〔智徳よ、宝珠の眷属が、地で守る戒とは、何か。〕
「我が師よ、財を盗まない、即ち、不盗の戒めかと。」
〔智徳よ、人間が、財を奪わせないのは、何故か。〕
「我が師よ、多くの財を、人が集められるためかと。」
〔智徳よ、宝珠の眷属が、天で護る仏とは、何か。〕
「我が師よ、財を偸ませる、即ち、偸盗の勧めかと。」
〔智徳よ、天人が、財を蔵させないのは、何故か。〕
「我が師よ、多くの人に、財を分けられるためかと。」
〔天人が、財産を奪うとき、人々は天災に遭う。
智徳よ、そのとき、地の者は、何と嘆くだろうか。〕
「我が物が窃まれる、ああ、我が物が盗まれる、と。」
〔智徳よ、本当に、天人が、財宝を損うだろうか。〕
「害わない、他に与える者に、奪った物を授くかと。」
〔智徳よ、天災を、嘆かないものは、如何なるか。〕
「師よ、損を認めて、徳が生じるため、得を招じる。」
〔妙なることだ、智徳よ、稀なることだ、智徳よ。
功徳の果報を司れ、その果報は、三十三天に通じる。〕