物語編
第四章 第五七話 物語編
第四章 順縁 と 逆縁
第五七話 善の突き詰め と 悪の突き詰め
〔智徳よ、金剛の眷属が、地で守る戒とは、何か。〕
「我が師よ、命を殺めない、即ち、不殺の戒めかと。」
〔智徳よ、人間が、悪人を殺さないのは、何故か。〕
「我が師よ、善を積む者に、悪を積ませない為かと。」
〔智徳よ、金剛の眷属が、天で護る仏とは、何か。〕
「我が師よ、命を延さない、即ち、殺生の勧めかと。」
〔智徳よ、天人が、悪人を許さないのは、何故か。〕
「我が師よ、悪を積む者に、悪を積ませない為かと。」
〔天人が、人間を裁くとき、人々に鏡を見せる。
智徳よ、そのとき、地の者は、何を見るだろうか。〕
「憎らしい奴が居る、ああ、殺したい奴が居る、と。」
〔智徳よ、本当に、天人が、人間を裁くだろうか。〕
「捌かない、自分で自分を裁き、人間が人間を捌く。」
〔智徳よ、今の鏡に、過去が映ると、如何なるか。〕
「師よ、過去が現在に、現在が未来に、輪廻が続く。」
〔妙なることだ、智徳よ、稀なることだ、智徳よ。
輪廻の審判を司れ、その果報は、閻魔法王に通じる。〕