物語編
第四章 第六十話 物語編
第四章 求道 と 不動
第六十話 究める前の心 と 極めた後の心
〔智徳よ、法輪の眷属が、地で守る戒とは、何か。〕
「我が師よ、酒を飲まない、即ち、不飲の戒めかと。」
〔智徳よ、人間が、酒色に酩わないのは、何故か。〕
「我が師よ、無智の裏にある、智慧を得るためかと。」
〔智徳よ、法輪の眷属が、天で護る仏とは、何か。〕
「我が師よ、酒を呑ませる、即ち、飲酒の勧めかと。」
〔智徳よ、天人が、酒色に酊わせるのは、何故か。〕
「我が師よ、無智の先にある、智慧を得るためかと。」
〔天人が、幻想を授けると、人々は無智に陥る。
智徳よ、そのとき、地の者は、何と思うだろうか。〕
「金星が落ちていく、ああ、魔王が堕ちていく、と。」
〔智徳よ、本当に、創造主に、魔は背くだろうか。〕
「叛かない、魔天は梵天の中に、想像は創造の内に。」
〔智徳よ、最後に、夢から覚めると、如何なるか。〕
「師よ、智慧が現れ、欲の世界が、梵天に還るかと。」
〔妙なることだ、智徳よ、稀なることだ、智徳よ。
知恵の果実を司れ、その果報は、他化自在天に通ず。〕