第四章 第五五話 対話編
CASE 成劫 の裏に 壊劫
マナミ 創造の時代、成劫って、どういうものなの?
マサシ 成劫とは、顕かな教えを、説く時代のことさ。
マナミ じゃあ、清らかな魂に、どんな教えを説くの?
マサシ 悪を憎み、善を愛すなら、欲天に帰ると説く。
マナミ 破壊の時代、壊劫って、どういうものなの?
マサシ 壊劫とは、密なる教えを、解く時代のことさ。
マナミ じゃあ、汚がれた魂に、どんな教えを解くの?
マサシ 悪を許し、我を捧げれば、梵天に還ると解く。
マナミ 素直に、善を愛せるならば、天の道を説き、
拗らせて、善を愛せないなら、神の道を解く?
マサシ 更に言えば、仮初めに、天に帰ったとしても、
遅かれ早かれ、拗らせて、魂が汚れてしまう。
マナミ 悪を憎んで、我が中に、悪を抱え込むから、
そのうち、天から落ちて、善を愛せなくなる?
マサシ そうさ、その時は、善にしても、悪にしても、
あらゆる、我を奉げて、創造主に還っていく。
マナミ つまり、欲界が壊される、壊劫期に於いては、
天に居ようが、地に居ようが、関係ないのね。
マサシ その通りさ、善も悪もない、徳に還っていく。
マナミ ……………………!!
CASE 成劫 の先に 壊劫
サトミ 創造を刻む、成劫って、どういうものかな?
メグミ 成劫とは、創造主が、欲界を創造するときよ。
サトミ 梵天が、欲界を創造すると、どうなるのかな?
メグミ 良くを捉えた魂は、天界に生まれ変わるし、
良くに捕われた魂は、下界に産まれ換わるよ。
サトミ 破壊を刻む、壊劫って、どういうものかな?
メグミ 壊劫とは、創造主が、欲界を破壊するときよ。
サトミ 梵天が、欲界を破壊すると、どうなるのかな?
メグミ 良くが溶けた魂は、色界に生まれ変わるし、
良くが解けない魂は、地獄に産まれ換わるよ。
サトミ つまり、良くを以って、欲界に生まれるけど、
良くを使いこなせないと、下に落ちていくの?
メグミ そうよ、善だけ愛して、悪を憎んでいると、
どんどん、落ちて逝って、地獄まで堕ちるよ。
サトミ そして、最後の最後は、欲を使えていようと、
欲に閊えていようと、欲を越えるしかないの?
メグミ 欲界が壊れる時は、良くを手放すしかないよ。
サトミ そもそも、欲界なんか、無ければ、良かった。
メグミ うふっ、その発想が、良くならでは、だよね。
サトミ ……………………
CASE 小乗 と 大乗 と 密教
マサシ さあ、今から、人類救済計画を始めようか。
ここに、美味しい飴と、美味くない飴がある。
サトミ どっちが、美味しい飴か、見ても分からない。
マサシ そうさ、食べて見ない限り、解からないし、
この計画、食べ尽さない限り、終わらないよ。
サトミ あたし、好き嫌い激しいし、食べないからね。
そもそも、こんな計画なんて、必要ないわよ。
マサシ それは、苦も楽も否定する、小乗の方法だね。
自分だけ、救われたら良いと、考える段階さ。
サトシ う~ん、誰も食べないなら、僕が食べようか。
みんなが、救われるなら、不味くても良いよ。
マサシ それは、苦も楽も経験する、大乗の方法だね。
他者から、救われたら良いと、考える段階さ。
マナミ みんな、どうしてそんなに、躊躇っているの?
味に、捕らわれなければ、何でも食べられる。
マサシ それは、苦も楽も肯定する、密教の方法だね。
我を忘れ、何でも美味しいと、考える段階さ。
メグミ この計画が、本当に必要か、聴いて来たけど、
先生は、笑うばかりで、教えてくれなかった。
サトミ ……………………
CASE 成劫 と 住劫 と 壊劫
サトミ どうして、様々な教えが、説かれるのかな?
メグミ 欲界の魂は、時が進むほど、堕ちていくから、
時代に合せて、説くべき教えが、変わるのよ。
サトミ 創造の時期、成劫って、どんな時代なのかな?
メグミ 成劫期は、善業が多くて、悪業が少ないのよ。
サトミ 清浄を好み、不浄を嫌う魂には、何を説くの?
メグミ 不浄を避けて、天まで帰る、厭離を説くのよ。
サトミ あたしは、天に帰るより、地上で生きたいな。
維持の時期、住劫って、どんな時代なのかな?
メグミ 住劫期は、善業も増えて、悪業も殖えるのよ。
サトミ 繁栄を好み、衰退を嫌う魂には、何を説くの?
メグミ 幸福を求めて、他を利する、利他を説くのよ。
サトミ あたしは、他を利すより、利己で生きたいな。
破壊の時期、壊劫って、どんな時代なのかな?
メグミ 壊劫期は、悪業が多くて、善業が少ないのよ。
サトミ 怠惰を好み、勤勉を嫌う魂には、何を説くの?
メグミ 解放を求めて、我を忘れる、放棄を説くのよ。
サトミ あたしは、それも嫌だな、他の方法は無いの?
メグミ うふっ、もうないよ、後は、全て壊れるだけ。
サトミ ……………………