第四章 第六十話 対話編
CASE 求道 の裏に 不動
マナミ 心を動かす、求道って、どういうものなの?
マサシ 求道とは、貪欲を持って、真理を望むことさ。
マナミ 道を究める、その前は、貪りを使っていくの?
マサシ 真理を望んで、その他は、貪欲を捨てるのさ。
マナミ 心が止まる、不動って、どういうものなの?
マサシ 不動とは、貪欲を越えて、真理に臨むことさ。
マナミ 道を極めた、その後は、貪りを越えていくの?
マサシ 真理に臨んだ、その暁は、貪欲を離れるのさ。
マナミ 確かに、貪欲は、根本たる、煩悩だけれど、
真理を求める、原動力として、使いこなすの?
マサシ 真理は、心から求めないと、与えられない。
真理以外、総べて諦めないと、現れてこない。
マナミ つまり、執着の対象を、真理に絞っていき、
少しずつ、その他の物を、望まなくするのね。
マサシ そして、最後の最後は、真理そのものになり、
求道心が、役目を終えて、不動心になるのさ。
マナミ ええっ、ということは、真理を悟ったときは、
真理さえ、望まなくなり、貪欲が消え去るの?
マサシ そうさ、総べてを有り難く、受け容れるのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 求道 の先に 不動
サトミ 道を求める、求道心は、どういうものかな?
メグミ 求道心は、真理を望んで、心を動かすことよ。
サトミ 法を求めて、心を働かすと、どうなるのかな?
メグミ 真理に対して、執着が集まり、煩悩が減るよ。
サトミ 道を究める、不動心は、どういうものかな?
メグミ 不動心は、真理に臨んで、心を止めることよ。
サトミ 法を修めて、心が停まると、どうなるのかな?
メグミ 真理に対する、執着も消えて、煩悩を越すよ。
サトミ つまり、真理に囚われて、煩悩を超えるけど、
最終的に、煩悩を越えたら、真理も離れるの?
メグミ そうよ、心が動かない、涅槃の境地になるの。
サトミ もう、総てが終わりなの、本当に何もないの?
メグミ 実際は、道が続くけど、知らなくて良いよ。
そうして、心を動かすと、涅槃が崩れるから。
サトミ 壊れて良い、道を教えてよ、真実が知りたい。
メグミ 小乗は、真理に依って、煩悩を究めるけど、
大乗では、真理に拠って、菩提を極めるのよ。
サトミ 他のために、煩悩を負って、菩提に変えるの?
メグミ この先は、他に心を動かして、未知を求めて。
サトミ ……………………!!
CASE 求道 という 不動
サトシ 未知を進む、求道心は、どういうものかな?
アツシ 求道心は、未知を辿ると、心が動くことだな。
サトシ 知らないと、心が動くのは、どうしてなの?
アツシ 知るより、知らない方が、選び難いからだな。
サトシ 選び難いと、良くを持って、択ぶしかないの?
アツシ 意識的になり、有り難い方を、選ぶしかない。
サトシ 既知に至る、不動心は、どういうものかな?
アツシ 不動心は、既知を辿ると、心が止ることだな。
サトシ 知ってると、心が止るのは、どうしてなの?
アツシ 知らないより、知る方が、択び易いからだな。
サトシ 択び易いと、良くを以って、選ばなくなるの?
アツシ 無意識になり、当り前の法を、択んでしまう。
サトシ そうすると、不自然な道を、求道心で選び、
進んでいくと、自然体な道を、不動心で択ぶ?
アツシ そうだ、確かに、不動心は、培えてくるが、
それでも、敢えて、求道心で、突き進むんだ。
サトシ 全てが、当り前に成ったら、どうなるのかな?
アツシ それでも、敢えて、求道心で、突き進むんだ。
動きながら、動かない道が、未だ続いている。
サトシ ……………………!!
CASE 不動なき求道 と 求道なき不動
サトミ 求道と不動、とちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 心を動かす、求道心は、どういうものかな?
メグミ 求道心は、心を動かして、道を求めることよ。
サトミ 心を止める、不動心は、どういうものかな?
メグミ 不動心は、心を動かさず、道と化することよ。
サトミ 求道を望み、不動に臨まないと、どうなるの?
メグミ 不動なき求道なんて、唯の衝動に過ぎないよ。
サトミ じゃ、心を動かしても、心を止めないのかな?
メグミ そうよ、心に留めないと、道が続くだけだよ。
サトミ 不動を望み、求道に臨まないと、どうなるの?
メグミ 求道なき不動なんて、只の無道に過ぎないよ。
サトミ じゃ、心が止まっても、心が動かないのかな?
メグミ そうよ、心が働かないと、無に着くだけだよ。
サトミ 求道だけでは、心に留めず、虚に陥るだけで、
不動ばかりでは、心が働かず、無に嵌るだけ?
メグミ うん、求道と不動、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、不動に依り、求道に拠っていくの?
メグミ そうなの、求道を究め、不動を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 梵 天 勧 請
サトシ 仏陀が、悟りを開いたとき、衆生に対して、
法を説く事を、躊躇ったのは、どうしてかな?
アツシ 望んでない者に、法を説くべきでないからだ。
サトシ 求めない者に、法を説くと、どうなるのかな?
アツシ 法が腐って、業に変わるから、色が拡がるな。
サトシ 求める者だけ、法を説くと、どうなるのかな?
アツシ 法を介して、業を越えるから、空が広がるな。
サトシ それなら、仏陀は、誰も望んでいないという、
その状況を見極めて、真理を説かなかったの?
アツシ そうだ、法を説いても、業に腐ると見抜いた。
サトシ それゆえ、創造主である、梵天が現われて、
真理を、説いてくれるよう、仏陀に求めたの?
アツシ ああ、時が満ちていない、人類に代わって、
仏陀に、真理を説くことを、勧請したわけだ。
サトシ どうして、ここまでのことを、梵天がするの?
アツシ 自らが、欲界を創り出した、責を取るためだ。
サトシ そもそも、欲界なんかを、どうして創ったの?
自ら説かず、仏陀なんかに、どうして頼むの?
アツシ 時が満ちない、君達なんかに、訳は説けない。
サトシ ……………………
CASE 梵天 の裏に 仏陀
マナミ ねぇ、ブラフマ、梵天は、どういうものなの?
マサシ 梵天とは、欲の世界を、解放するものなのさ。
マナミ 梵天が、欲界を拵えると、どうなるのかな?
マサシ その器が、型と成って、欲の形が現れてくる。
マナミ この欲界に、多くの魂が、生れ変ってくるの?
マサシ 欲の仕組みに、巻き込まれ、業を重ねていく。
マナミ 業を重ねて、欲に塗れるほど、どうなるの?
マサシ 少しずつ、苦が拡がるから、不自由になるよ。
マナミ じゃ、ブッダ、仏陀って、どういうものなの?
マサシ 仏陀とは、欲の世界を、解脱するものなのさ。
マナミ 仏陀が、欲界を越えると、どうなるのかな?
マサシ その姿が、型と為って、欲の形が消えていく。
マナミ この欲界を、多くの魂が、乗り越えていくの?
マサシ 欲の仕掛けを、解き終えて、徳に還っていく。
マナミ 業を解いて、徳が蘇えるほど、どうなるの?
マサシ 少しずつ、空が広がるから、自在になるのさ。
マナミ う~ん、欲界に嵌まって、衆生は苦しむから、
創造主の、大梵天って、良くない神なのかな?
マサシ その無智を、越えるため、欲界に生れるのさ。
マナミ ……………………
CASE 梵天 の先に 仏陀
サトミ 欲界を創る、梵天って、どういうものかな?
メグミ 梵天とは、良くを介して、魂を育てるものよ。
サトミ 梵天が、良くを創り出すと、どうなるのかな?
メグミ その器に、徳が溶かれて、欲で充たされるよ。
サトミ 徳を溶いて、業を積むには、どうするのかな?
メグミ 思いのままに、楽を味わって、突き詰めるの。
サトミ 欲の世界で、楽を感じると、どうなるのかな?
メグミ 少しずつ、業が拡がって、抜け出せなくなる。
サトミ 欲界を越す、仏陀って、どういうものかな?
メグミ 仏陀とは、良くを解して、魂を育てるものよ。
サトミ 仏陀が、良くを説き出すと、どうなるのかな?
メグミ その法で、欲が解かれて、徳で満たされるよ。
サトミ 欲を解いて、業を摘むには、どうするのかな?
メグミ 在りのままに、苦を味わって、受け容れるの。
サトミ 欲の世界で、苦を感じると、どうなるのかな?
メグミ 少しずつ、空が広がって、抜け出したくなる。
サトミ う~ん、空を求めると、衆生は苦しむから、
空を説く、仏陀の教えは、良くない教えなの?
メグミ その無智を、越えるために、欲界を巡るのよ。
サトミ ……………………
CASE 梵天 と 天魔 と 仏陀
マナミ ねぇ、ブラフマ、梵天は、どういうものなの?
マサシ 梵天とは、欲界の仕組みを、創造するものさ。
マナミ じゃ、マーラ、天魔って、どういうものなの?
マサシ 天魔とは、欲界の仕掛けを、想像するものさ。
マナミ じゃ、ブッダ、仏陀って、どういうものなの?
マサシ 仏陀とは、欲界の仕掛けを、出離するものさ。
マナミ 天魔が、仏陀を邪魔するのは、どうしてなの?
マサシ 仏陀が法を説くと、欲界に誰も居なくなるよ。
マナミ となると、ある意味、梵天と天魔と仏陀って、
欲界の創造者、維持者、破壊者ってことなの?
マサシ うん、良く気が付いたね、実に、その通りさ。
マナミ 梵天が、仏陀に勧請したのは、どうしてなの?
マサシ 破壊を前提にした、欲界の創造だったわけさ。
マナミ となると、ある意味、梵天と天魔と仏陀って、
対立する役割を、ただ、演じているだけなの?
マサシ そうさ、良く気づいたね、実に、その通りさ。
マナミ じゃ、創造主が禁じた実を、食べるように、
悪魔が、人類に唆したのって、自作自演なの?
マサシ あっ、その先まで言ったら、魔が邪魔するよ。
マナミ ……………………!!
CASE 仏陀なき梵天 と 梵天なき仏陀
サトミ 梵天と仏陀、とちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 入口を開く、梵天って、どういうものかな?
メグミ 梵天とは、入口を創って、衆生を誘うものよ。
サトミ 出口を拓く、仏陀って、どういうものかな?
メグミ 仏陀とは、出口を作って、衆生を導くものよ。
サトミ 梵天を望み、仏陀に臨まないと、どうなるの?
メグミ 仏陀なき梵天なんて、唯の魔神に過ぎないよ。
サトミ じゃ、入口を創っても、出口を作らないの?
メグミ そうよ、自ら救わないと、他を治めるだけよ。
サトミ 仏陀を望み、梵天に臨まないと、どうなるの?
メグミ 梵天なき仏陀なんて、只の番人に過ぎないよ。
サトミ じゃ、出口を作っても、入口を創らないの?
メグミ そうよ、誰も入れないと、誰も救えないのよ。
サトミ 梵天だけでは、欲が憑いて、徳が研けないし、
仏陀ばかりでは、欲が尽いて、徳が磨けない。
メグミ うん、梵天と仏陀、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、仏陀を巡り、梵天を廻っていくの?
メグミ そうなの、梵天に会い、仏陀に逢っていくの。
サトミ ……………………!!