物語編
第五章 第一話 物語編
第五章 信仰 と 真仰
第一話 真我を信じる と 自我を捨てる
〔梵天が欲を創造すると、魔天が善を想像する。
天魔により、欲界の衆生は、善に酔わされている。
欲を望む者で、究極の想像に、嵌らない者は居ない。〕
〔この天魔の支配から、欲界の衆生を救うため、
父なる梵天は、子なる菩薩を、遣わせるのである。
智徳よ、我々が、ここに居るのは、そのためである。〕
すると、主は、静かに振り返り、私を見つめ直した。
〔先の十年は、顕教を説いて、善の道を勧めて、
その後の十年は、密教を解いて、悪の道を進めた。
汝は、順と逆の道、双方を修めて、中庸に導かれた。〕
〔今なら涅槃に至れるが、今一度、汝に尋ねる。
私と共に済度に回るか、独り静かに涅槃に入るか。
汝が望む道を選ぶが良い、汝には自由な意志がある。〕
無意識に、突き動かされるように、私は答えていた。
「顕教の弟子が若干名と、密教の弟子が一名が、
私が、主を連れて来るのを、心待ちにしています。
彼らを、置き去りにしたまま、涅槃には至れません。」
「主よ、私が説き明かした、旧き教えに代わり、
選民の為、新しい教えを、約束の地に解き給まえ。
万民の為に、契約の更改を、啓典の民に為し給まえ。」