物語編
第五章 第三話 物語編
第五章 賛美 と 賛嘆
第三話 喜びを称える と 憂いを称える
〔図らずも、汝は、人類に、知恵の実を授けた。
世の人は、善は好んでも、悪は嫌うようになって、
望んだ所は臨んでも、望まない処は臨まなくなった。〕
〔良くを望むからこそ、飽くに苛まれてしまう。
万事が楽な、歓喜の園に、飽いてしまった人類は、
自業自得、にもかかわらず、これを神のせいにした。〕
〔神の怒りを恐れ入り、神を避け出した人類は、
後で楽しむためには、先に苦しまないとならない、
生みを苦しみを免れず、労苦の地に堕ちてしまった。〕
〔知恵の実を食して、善悪を分けるようになり、
我がままの善悪をして、在りのままの世界を裁く。
これこそ、世に言われる、原罪と呼ばれる咎である。〕
〔無明の闇に覆われ、識別が生じるようになり、
我がままに愛着をして、在りのままの世界が偏る。
これこそ、仏が説かれる、縁起と呼ばれる業である。〕
〔即ち、汝が務めた役は、堕天使に他ならない。
これこそ、第六天魔が司る、飲酒の教えそのもの。
人類は、幻想に酔う先に、真実に覚める道に入った。〕