物語編
第五章 第四話 物語編
第五章 祈念 と 祈祷
第四話 我が意を祈る と 神の意を祈る
〔人を引き落した者は、自らが引き落されるか、
他の人を引き上げて、罪を浄めないと為らないが、
我が罪を認めない汝は、独り神の国に還ろうとした。〕
〔汝は、私が遣わした、使徒に出逢ったはずだ。
彼に、何を言われようと、無視を決め込んだ汝は、
恰かも、涅槃を妨げる、悪魔の如く、彼を見ていた。〕
〔私が、岩戸に篭る汝に、夢まで遣わせた彼は、
独りだけ、涅槃に臨む汝に、幻影の試練を与えた。
彼の邪魔なくして、汝は、無明の闇を払えなかった。〕
〔私が、高地に籠る民に、宣教に使わせた汝は、
救世主を、輪廻に望む民に、絶対善の幻を授けた。
汝の誘惑なくして、民は、善の追求に向わなかった。〕
〔はっきり言っておく、私が遣わした彼にせよ、
私が使わした汝にしても、第六天魔に他ならない。
そして、天魔こそ、知恵を司る、深淵の使徒である。〕
〔堕天使とは、徒に神に逆らう、邪魔ではない。
神が遣わし、知恵を磨かせる、使徒に他ならない。
知恵ある者は、使徒と見て、無智な者は邪魔と見る。〕
〔神の使徒を見ながら、神の反逆者と見たのは、
他でもない、汝自身、同じ業を積んでいたからだ。
彼を自らと認めない限り、この無智は晴れなかった。〕