物語編
第五章 第五話 物語編
第五章 人類 と 使徒
第五話 人の業を積む と 神の業に捧ぐ
〔図らずも、汝は、第六天魔の命を果したため、
引き落とした人類を、引き上げる業が負わされた。
失楽園の次の章が、モーセ、「引き上げる」である。〕
〔汝が、知恵の実を与え、欲を持たせたことで、
放っておいても、楽しみ続ける、王族が生まれて、
放ってしまったら、苦しみ続ける、奴隷が埋まれた。〕
〔汝に近づく者は、ますます、豊かになったが、
汝から遠い者は、ますます、貧しくなっていった。
少数の善趣と、多数の悪趣に、欲界は二極に裂けた。〕
〔にもかかわらず、汝は、この事態を放置した。
瞑想という名の、精神の岩戸に、篭り切ったまま、
神の如く、王家に祭られることを、善しとしていた。〕
〔汝は、汝の元に捧げられた、有り余る供物が、
どこから、届けられていたのか、分かっていたか。
まさか、貴族が捧げていたと、思ってはなかろうな。〕
〔確かに、供物を捧げたのは、祭司に違いない。
しかし、王族は一つとして、犠牲を払わなかった。
神に捧ぐ、贄に選ばれたのは、奴隷に違わなかった。〕
〔神に遠い者を蔑んで、神に近いと驕れる者は、
実際に神の元に届くのは、遠い者だと知りなさい。
この仕掛けが解けない者は、選民思想は抜けられぬ。〕