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物語編

第五章 第十話 物語編

第五章   知恵   と   生命
第十話 善悪を供える と 永遠を具える

 

汝は、本当の意味で、大学の門から抜け出し、
生病老死に苛まれる、民の姿を目の当たりにして、
これまで、如何に、自分が偏っていたか思い知った。

 

門の外には、法で切り捨てた者が溢れていた。
汝が導いたのは、奴隷とはいえ、同胞の民であり、
真の奴隷とは、異邦の民だったと、漸く気が付いた。

 

確かに、類は友を呼ぶ、護られた世界ならば、
愛でも、法でも届きやすく、守り甲斐もあろうが、
四門出遊、無法の世に出ると、愛は冷え切っていた。

 

法を持って来ようと、口実に使われてしまい、
徳を以って報いようとも、獲物と見られてしまう。
大火を油で消すが如き、理不尽に襲われた事だろう。

 

十年に渡って、汝は、世界の底辺を這い回り、
憎み合う悪しき者の中に、呑み込まれてしまった。
同じ境遇まで落魄れて、初めて認める世界があった。

 

一見、虚しいだけに見えた、汝の行だったが、
その裏で、培わされた物が、確実に存在していた。
それは、悪しき者らとの縁と、空しい器の徳である。

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