物語編
第五章 第十二話 物語編
第五章 後悔 と 悔悟
第十二話 知恵が滅びる と 知恵が蘇える
〔密教とは、思いのままに、善と悪に解さない、
在りのままに、有り難く臨む、完全な受容であり、
神の裁きに、総べてを任せ切る、神聖な放棄である。〕
〔汝は、十年にも及び、地獄の釜の底を磨いて、
悪しき業を清めて来たが、密教の要諦を悟り得ず、
分別を抜け切らぬまま、徒に、時を長引かせていた。〕
〔善悪を説いた者が、善悪を解く為の回心の旅。
それに終止符を打つ為、私自ら汝の元に向かった。
千年の時を、一日に縮めるため、汝に試練を課した。〕
〔汝は、五戒を順逆に覆す、五仏の試練に対し、
先の四つは従えたが、残る一つには遵えなかった。
智慧の徳、その本性故、汝には言い訳が必要だった。〕
〔救世主の先に現われ、神の道を整える使命を、
汝は、完全ではなくとも、充分に果したと言える。
しかし、果し切れない生は、次の章に引き継がれる。〕
〔智徳よ、先に洗われて、先例の型を整える者、
洗礼者、ヨハネとして、神の道を真っ直ぐにせよ。
汝が、負い切れない分は、私が覆い尽すことになる。〕