第五章 第十三話 対話編
CASE 失楽 の裏に 復楽
マナミ 楽園を失う、失楽園って、どういうものなの?
マサシ 失楽園は、知恵の実を食べ、歓喜を失うのさ。
マナミ 善悪を分け、歓喜を失うのは、どうしてなの?
マサシ 楽を喜んでも、苦を悲しむから、半分になる。
マナミ 労苦の地は、苦労をしてこそ、安楽になるの?
マサシ 生みの苦しみ、地の命とは、そういうものさ。
マナミ 楽園に復す、復楽園って、どういうものなの?
マサシ 復楽園は、生命の実を食べ、歓喜が蘇るのさ。
マナミ 天命が分り、歓喜が蘇るのは、どうしてなの?
マサシ 楽も歓べるし、苦も喜べるから、完全になる。
マナミ 歓喜の園は、すべて愛すから、歓喜になるの?
マサシ 汝の敵を愛せ、天の命とは、それだけなのさ。
マナミ 知恵の実を食べ、労苦の地に、生まれ堕ちて、
知恵を磨いて、歓喜の園に、生まれ変わるの?
マサシ それこそが、人類に課された、神様の試練さ。
マナミ 汝の悪を愛せ、これこそが、神の密命なのね。
マサシ そうさ、何度か、手本が、贈られて来てるよ。
マナミ でも、人類は倣わずに、命が続いているのね。
マサシ 人類は、知恵を腐らせて、天命を歪めている。
マナミ ……………………!!
CASE 失楽 の先に 復楽
サトミ 歓喜を失う、失楽って、どういうものかな?
メグミ 失楽とは、原罪を犯して、楽園を去ることよ。
サトミ 善を愛して、悪を憎むほど、徳を損なうの?
メグミ 欲の象徴、知恵の実を食すと、生命を失うよ。
サトミ 歓喜が蘇る、復楽って、どういうものかな?
メグミ 復楽とは、原罪を償って、楽園に戻ることよ。
サトミ 善も歓んで、悪も喜ぶほど、徳が蘇えるの?
メグミ 徳の象徴、生命の実を食すと、生命が甦るよ。
サトミ 欲を持って、善悪に別つと、歓喜を損って、
功徳を以って、善悪を合すと、歓喜が蘇るの?
メグミ 憎む思いで、悪を否めると、永遠を損って、
愛する想いで、悪を認めると、永遠が蘇るよ。
サトミ 知恵が生じ、欲に塗れると、生命を損って、
知恵を磨いて、徳を重ねると、生命が蘇るの?
メグミ 良くを信じ、善に偏るから、密命が解らず、
飽くを確かめ、悪も見るなら、密命を悟るよ。
サトミ 思いのまま、神を捕らえて、失楽したから、
在りのままに、神を捉えると、復楽するわけ?
メグミ うふっ、神を裁いたから、我が捌かれるだけ。
サトミ ……………………!!
CASE 失楽 という 復楽
サトシ 欲の果実、知恵の実は、どういうものかな?
マサシ 知恵の実は、欲を持って、善悪を解すことさ。
サトシ 徳の果実、生命の実は、どういうものかな?
マサシ 生命の実は、徳を以って、善悪を合すことさ。
サトシ 神様が、前者を禁じたのは、どうしてなの?
マサシ 欲が生じ、善は歓べても、悪が喜べなくなり、
人類が、歓喜の園には、住めなくなるからさ。
サトシ 天使達に、後者を守らせたの、どうしてなの?
マサシ 善悪を知り、善悪に囚われない、神の境地に、
至るためには、試練が在るという、意味だよ。
サトシ おかしいな、僕が聞いた説とは、何か違うよ。
マサシ 生命の実まで、人類が食べて、神に進化する。
それを恐れ、神が妨害する、解釈のことかい?
サトシ それだよ、その解説なら、聞いたことがある。
マサシ やたら、神が人間臭いけど、変だと思わない?
サトシ 想わない、これぐらいの方が、解りやすいよ。
マサシ 未だに、人類の知の果実は、この程度なのか。
サトシ 楽園から、神様に追い出され、堕落中だもん。
マサシ 試し鍛えて、導いて来いと、命じられたけど。
サトシ ……………………
CASE 復楽なき失楽 と 失楽なき復楽
サトミ 失楽と復楽、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 楽園の追放、失楽って、どういうものかな?
メグミ 失楽とは、善だけ愛して、神を忘れることよ。
サトミ 楽園の復帰、復楽って、どういうものかな?
メグミ 復楽とは、悪まで愛して、我を忘れることよ。
サトミ 失楽を望み、復楽に臨まないと、どうなるの?
メグミ 復楽なき失楽なんて、反抗期に過ぎないよ。
サトミ じゃ、我が熟さないと、神に逆らうだけなの?
メグミ そうよ、我が熟されたら、神に還っていくよ。
サトミ 復楽を望み、失楽に臨まないと、どうなるの?
メグミ 失楽なき復楽なんて、胎児期に過ぎないよ。
サトミ じゃ、我が生じないと、神に従がうだけなの?
メグミ そうよ、我が産まれたら、神を忘れていくよ。
サトミ 失楽だけでは、抗い続けて、我を研けないし、
復楽ばかりでは、篭り続けて、我を磨けない。
メグミ うん、失楽と復楽、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、復楽を追い、失楽を負っていくの?
メグミ そうなの、失楽を透し、復楽を徹していくの。
サトミ ……………………!!
CASE 知 恵 の 実
サトシ 善なるもの、良くって、どういうものかな?
マサシ 良くとは、知恵が生じて、善を望むことだよ。
サトシ 欲を持って、善を望むって、どういうこと?
マサシ 善とはね、楽の源であり、天そのものなのさ。
サトシ 善とは、苦や悲を知らない、天国の本質なの?
マサシ そうだよ、初めに知恵は、昇天を望んでいく。
サトシ 悪なるもの、飽くって、どういうものかな?
マサシ 飽くとは、知恵が生じて、悪に臨むことだよ。
サトシ 欲を以って、悪に臨むって、どういうこと?
マサシ 悪とはね、苦の源であり、魔そのものなのさ。
サトシ 悪とは、楽や喜を知らない、地獄の本質なの?
マサシ そうだよ、後から知恵は、堕天に臨んでいく。
サトシ 知恵の実を、食べると、良くと飽くに分れて、
善と悪を、味わいながら、知恵を磨くのかな?
マサシ その通りさ、神様から、歓喜の園を追われ、
ひたすら、苦楽を味わう、労苦の地を巡るよ。
サトシ つまり、その苦楽こそ、与えられた分別で、
授かった、知恵を鍛える、欲というものだね。
マサシ まさに、これが解ることが、知恵の実なのさ。
サトシ ……………………!!
CASE 生 命 の 実
サトシ 徳なるもの、解くって、どういうものかな?
マサシ 解くとは、生命が実って、徳に至ることだよ。
サトシ 善悪が無い、徳に至るって、どういうこと?
マサシ 徳とはね、空の器であり、命そのものなのさ。
サトシ 徳とは、善や悪に属さない、生命の本質なの?
マサシ そうだよ、全ての生命は、使命を演じている。
サトシ 空なるもの、空くって、どういうものかな?
マサシ 空くとは、生命が実って、空に到ることだよ。
サトシ 実体が無い、空に到るって、どういうこと?
マサシ 空とはね、光の源であり、神そのものなのさ。
サトシ 空とは、善や悪に塗れない、生命の源泉なの?
マサシ そうだよ、総ての生命は、神命を宿している。
サトシ 生命の実を、食べると、良くと飽くが合さり、
徳と空を、味わいながら、生命が甦るのかな?
マサシ その通りさ、神様から、天の使命を受けて、
ひたすら、人々を救って、使徒の命を果すよ。
サトシ つまり、その天命こそ、与えられた性分で、
授かった、本分を果たす、徳というものだね。
マサシ まさに、これを悟ることが、生命の実なのさ。
サトシ ……………………!!