物語編
第五章 第十五話 物語編
第五章 飽く と 解く
第十五話 欲に帰り着く と 徳に還り着く
私は、神の仕組を整える、新たな使命を受けて、
自分が、偏らせた人の世を、自らの手で直すため、
世の人に、悔い改めを告げに、大学に戻ろうとした。
ところが、私が戻ると聞いた、近しい弟子らは、
止めて下さい、危険が過ぎると、我が道を遮った。
もはや、大学は、私が知っている、大学ではないと。
私が、知恵の実を授け、善を説いて置きながら、
最善に就く、其の当日に、最善を投げ捨てたため、
裏切者として、現在の私は、信者に見做されている。
今、協会に帰れば、罪人として屠られてしまい、
悔い改めなど説けば、悪魔として殺されてしまう。
燃え盛る信仰の大火に、油を注ぎに行く必要はない。
民に悔い改めを説くのが、神の使命だとしても、
その目的を遂げるだけなら、他の手段もあるはず。
民の信心を徒に刺激して、命を危めることはないと。
愛する弟子の言葉に、微塵も偽善など無かった。
心の底から、我が身を、案じてくれる事が解かる。
人の優しさが、痛い位に、心の奥底まで染み渡った。