物語編
第五章 第十七話 物語編
第五章 父 と 子
第十七話 世界を映す鏡 と 世界を移す道
彼らは、予想を裏切る、事態を目の当りにして、
初めこそ、激しく狼狽え、酷く取り乱していたが、
論を持って、解き明かされ、落ち着きを取り戻した。
彼らは、神の言を辿れる、知恵が具わっていて、
また、神の言を確められる、信仰が備わっていた。
さても、知恵の果実とは、悪いばかりではなかった。
そして、冷静になると、事の重大さに気づいた。
果たして、斯様な難題を、民は解けるのだろうか。
神に欺かれて、神を恨まない者が、居るのだろうか。
大いなる欲を持ち、神を絶対善と認める者ほど、
神に近づこうとして、自らの善を積み上げていく。
それは神に倣おうとする、純粋な善意に他ならない。
不純な欲が、打ち砕かれても、仕方は有るまい。
しかし、神は、純粋な欲にせよ、不純な欲にせよ、
神に近づこうと、積み上げた業を、悉く打ち壊わす。
何となれば、善の先には、神は存在しないから。
神は、憎しみからではなく、愛しているからこそ、
人々に、人の業を打ち壊して、罪を悔い改めさせる。