第五章 第十四話 対話編
CASE 良く の裏に 飽く
マナミ 望んでいく、良くって、どういうものなの?
マサシ 良くとは、裕りに対かい、進んで行くことさ。
マナミ 臨んでいく、飽くって、どういうものなの?
マサシ 飽くとは、限りに向かい、進んで行くことさ。
マナミ う~ん、良く解らない、どういうことなの?
マサシ それなら、器と水で、喩えることにしようか。
つまり、器が徳であり、水が欲であるとする。
マナミ 器の中に、水を垂らすと、どうなるのかな?
マサシ もっと、水を注ぎたくなる、これが良くだよ。
マナミ 器の中に、水が溜まると、どうなるのかな?
マサシ もはや、水を注げなくなる、これが飽くだよ。
マナミ どれだけ、大きな器でも、限りは有るから、
ずっと、注ぎ続けると、必ず満ちてしまうの?
マサシ うん、良くを究めるほど、飽くに極まるのさ。
マナミ 良くなると、裕りが減って、飽いてくるし、
良くないほど、裕りが増えて、飽いてこない。
マサシ 何が良くて、何が悪いのか、解らなくなるね。
マナミ 確かにね、そうだけれど、そういうものなの。
マサシ そんな君は、まだまだ、これに飽いてないよ。
マナミ ……………………
CASE 良く の先に 飽く
サトミ 尽くすこと、良くって、どういうものかな?
メグミ 良くとは、積み重ねると、積み上がることよ。
サトミ 尽きること、飽くって、どういうものかな?
メグミ 飽くとは、積み続けると、詰んで来ることよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
メグミ それなら、土と塔で、喩えることにするね。
つまり、土が徳であり、塔が欲であるとする。
サトミ 地の上に、塔を建てると、どうなるのかな?
メグミ もっと、塔を高くさせたい、これが良くだよ。
サトミ 地の上の、土が尽きると、どうなるのかな?
メグミ もはや、塔が高くならない、これが飽くだよ。
サトミ どれだけ、大量の土でも、限りは有るから、
ずっと、積み上げると、必ず尽きてしまうの?
メグミ うん、良くを究めるほど、飽くに極まるのよ。
サトミ 高くなると、土が寡いから、建て難くなるし、
高くないほど、土が多いから、立て易くなる?
メグミ 何が良くて、何が悪いのか、分らなくなるね。
サトミ そうかな、建ててみなければ、解からないよ。
メグミ うふっ、積んでみなければ、詰まないからね。
サトミ ……………………
CASE 良く という 飽く
サトシ 楽しいこと、良くって、どういうものかな?
アツシ 良くとは、分別を持って、善になることだな。
サトシ 苦しいこと、飽くって、どういうものかな?
アツシ 飽くとは、分別を以って、悪になることだな。
サトシ そうすると、良くとは、善を望むことなの?
アツシ そうだな、楽を望むから、苦に臨まなくなる。
サトシ 楽を求めて、苦を避けると、どうなるのかな?
アツシ 少しずつ、楽が少なくなって、苦が多くなる。
サトシ どうしても、苦に臨んでしまう、仕掛けなの?
アツシ 初めは良いが、後からは悪くなる、仕組みだ。
サトシ そうすると、飽くとは、悪に臨むことなの?
アツシ そうだな、楽を望むから、苦に臨んでしまう。
サトシ う~ん、良くするつもりが、悪くなっていく。
どうして、こんなことに、なっちゃうのかな?
アツシ 元より、この世界には、善も悪も無いのに、
欲を持ち、思いのままに、切り分けたからだ。
サトシ う~ん、良くを持って、善と悪に別けたから、
最終的に、飽くを以って、苦しんでしまうと。
アツシ いずれ、この仕組にも、飽きるから大丈夫だ。
サトシ ……………………
CASE 飽くなき良く と 良くなき飽く
サトミ 良くと飽く、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 善なるもの、良くって、どういうものかな?
メグミ 良くとは、分別を持って、善を味わうことよ。
サトミ 悪なるもの、飽くって、どういうものかな?
メグミ 飽くとは、分別を以って、悪を味わうことよ。
サトミ 良くを望み、飽くに臨まないと、どうなるの?
メグミ 飽くなき良くなんて、唯の不悪に過ぎないよ。
サトミ じゃ、善を味わっても、悪を味わわないの?
メグミ いずれ、悪を味わうから、悪が延びるだけよ。
サトミ 飽くを望み、良くに臨まないと、どうなるの?
メグミ 良くなき飽くなんて、只の不善に過ぎないよ。
サトミ じゃ、悪を味わっても、善を味わわないの?
メグミ いずれ、善を味わうから、善が伸びるだけよ。
サトミ 良くだけでは、善を追って、悪を負わないし、
飽くばかりでは、悪を負って、善を追わない。
メグミ うん、良くと飽く、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、飽くを透し、良くを徹していくの?
メグミ そうなの、良くを究め、飽くを極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 飽く の裏に 空く
マナミ 満ちていく、飽くって、どういうものなの?
マサシ 飽くとは、限りに対かい、進んで行くことさ。
マナミ 渇いていく、空くって、どういうものなの?
マサシ 空くとは、裕りに向かい、退いて行くことさ。
マナミ う~ん、良く解らない、どういうことなの?
マサシ それなら、器と水で、喩えることにしようか。
つまり、器が徳であり、水が欲であるとする。
マナミ 器の中に、水が満ちたら、どうなるのかな?
マサシ もはや、水が注げなくなる、これが飽くだよ。
マナミ 器の中の、水が渇いたら、どうなるのかな?
マサシ やがて、水が注げるように、これが空くだよ。
マナミ どれだけ、珍しい水でも、乾きは有るから、
ずっと、待ち続けると、必ず渇いてしまうの?
マサシ うん、飽くを究めるほど、空くに極まるのさ。
マナミ 飽きるほど、裕りが増えて、空いてくるし、
飽きないほど、裕りが減って、空いてこない。
マサシ 何が良くて、何が悪いのか、解らなくなるね。
マナミ 確かにね、もういい加減、飽いてきちゃった。
マサシ そんな君は、そろそろ、これに空いてくるよ。
マナミ ……………………!!
CASE 飽く の先に 空く
サトミ 飽きること、飽くって、どういうものかな?
メグミ 飽くとは、積み続けると、飽いて来ることよ。
サトミ 空かすこと、空くって、どういうものかな?
メグミ 空くとは、摘み続けると、空いて来ることよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
メグミ それなら、土と塔で、喩えることにするね。
つまり、土が徳であり、塔が欲であるとする。
サトミ 地の上の、土が尽きると、どうなるのかな?
メグミ もはや、塔が高くならない、これが飽くだよ。
サトミ 塔の上の、土が崩れると、どうなるのかな?
メグミ やがて、塔が壊れてしまう、これが空くだよ。
サトミ どれだけ、珍しい土でも、朽ちは有るから、
ずっと、待ち続けると、必ず崩れてしまうの?
メグミ うん、飽くを究めるほど、空くに極まるのよ。
サトミ 崩れるほど、土が増すから、建て易くなるし、
壊れないほど、土が減るから、立て難くなる?
メグミ 何が良くて、何が悪いのか、分らなくなるね。
サトミ 繰り返し、建ててみたけれど、壊れちゃった。
メグミ うふっ、詰んでみなければ、摘まないからね。
サトミ ……………………!!
CASE 良く と 飽く と 空く
サトシ 嬉しいこと、良くって、どういうものかな?
アツシ 良くとは、分別を持って、楽になることだな。
サトシ 悲しいこと、飽くって、どういうものかな?
アツシ 飽くとは、分別を以って、苦になることだな。
サトシ 空しいこと、空くって、どういうものかな?
アツシ 空くとは、分別を辞して、空になることだな。
サトシ 自我の器に、欲を垂らすと、どうなるのかな?
アツシ それ以上、注ぎたくなるはず、これが良くだ。
サトシ 自我の器に、欲が満ちると、どうなるのかな?
アツシ これ以上、注ぎたくなくなる、これが飽くだ。
サトシ 飽いてから、放って置くと、どうなるのかな?
アツシ もう一度、注げるようになる、これが空くだ。
サトシ 空いてから、欲を垂らすと、どうなるのかな?
アツシ それ以上、注ぎたくなるはず、これが良くだ。
サトシ そうすると、空くを介して、良くと飽くが、
何度でも、繰り返される事に、為らないかな?
アツシ 飽きないと、何度だろうが、繰り返すだろう。
サトシ これでは、切りが無いよ、どうしたら解ける?
アツシ 飽きるまで、繰り返すしか、解けないだろう。
サトシ ……………………
CASE 空くなき飽く と 飽くなき空く
サトミ 飽くと空く、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 苦なるもの、飽くって、どういうものかな?
メグミ 飽くとは、分別を持して、苦を味わうことよ。
サトミ 空なるもの、空くって、どういうものかな?
メグミ 空くとは、分別を辞して、空を味わうことよ。
サトミ 飽くを望み、空くに臨まないと、どうなるの?
メグミ 空くなき飽くなんて、唯の不空に過ぎないよ。
サトミ じゃ、苦を味わっても、空を味わわないの?
メグミ いずれ、空を味わうから、空が延びるだけよ。
サトミ 空くを望み、飽くに臨まないと、どうなるの?
メグミ 飽くなき空くなんて、只の不苦に過ぎないよ。
サトミ じゃ、空を味わっても、苦を味わわないの?
メグミ いずれ、苦を味わうから、苦が伸びるだけよ。
サトミ 飽くだけでは、苦を負って、空を追わないし、
空くばかりでは、空を追って、苦を負わない。
メグミ うん、飽くと空く、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、空くを透し、飽くを徹していくの?
メグミ そうなの、飽くを究め、空くを極めていくの。
サトミ ……………………!!