第五章 第十六話 対話編
CASE 一神 の裏に 多神
マナミ 唯一神たる、一神って、どういうものなの?
マサシ 一神とは、唯一であると、神を考えることさ。
マナミ 一神に臨む、良い点は、どういうところなの?
マサシ 一神教は、絶対性が有り、求心力に富むのさ。
マナミ 一神を望む、悪い点は、どういうところなの?
マサシ 一神教は、多様性が無く、包容力に欠けるよ。
マナミ 八百万たる、多神って、どういうものなの?
マサシ 多神とは、凡百であると、神を考えることさ。
マナミ 多神に臨む、良い点は、どういうところなの?
マサシ 多神教は、多様性が有り、包容力に富むのさ。
マナミ 多神を望む、悪い点は、どういうところなの?
マサシ 多神教は、絶対性が無く、求心力に欠けるよ。
マナミ 一神の段は、求心力をして、突き詰めていき、
多神教の階は、包容力をして、受け容れるの?
マサシ 未熟な民は、協調性を説き、細やかに誘い、
成熟した民は、自主性を解き、大らかに導く。
マナミ 厳しい代り、自尊心を与え、選れさせるか。
優しい代わり、依存心を奪い、優れさせるか。
マサシ どちらでも、選んで良いよ、僕は後者だから。
マナミ ……………………!!
CASE 一神 の先に 多神
サトミ 神は、一元なんだから、一神教こそ正しいの。
メグミ 確かに、絶対なる神様は、一元に居るけど、
その神が、二元に移るとき、多神に映るのよ。
サトミ う~ん、良く解からない、どういうことなの?
メグミ 一元の神が、二元の世界に、表れるときに、
表になる名と、裏になる名が、現れるからよ。
サトミ Aの名で呼ばれる、神様が表に生まれると、
非Aの名で呼ばれる、神様が裏に埋まれるの?
メグミ そうよ、だからね、神の絶対を信じたければ、
Aと非A、どちらも、神の化身と認めるのよ。
サトミ つまり、多神を排して、一神を拝していると、
逆に、一神教の絶対性が、揺らいでしまうの?
メグミ そうよ、八百万の神は、森羅万象の象徴と、
そう、受け容れたときに、絶対神が蘇えるの。
サトミ う~ん、あたしだって、そう思いたいけど、
絶対、そう想ったら、駄目と言われているの。
メグミ 我以外、神と信じるな、そう戒められたの?
サトミ うん、あたし、神様から、直々に言われたの。
メグミ それも、化身の一つと認め、絶対神を信じて。
サトミ ……………………!!
CASE Y H W H
サトシ あのね、YHWHって、どういうものかな?
マサシ うん、テトラグラマトン、聖なる神の名だよ。
サトシ 母音が、無いんだけど、何て読めば良いの?
マサシ 神の名は、分けたり、呼んだらいけないのさ。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
マサシ 本来、神様は一元なのに、名前は二元なのさ。
だから、神に名を付けると、分裂してしまう。
サトシ すなわち、神様と呼ぶと、非神様が現れるの?
マサシ そうさ、そういう訳で、妄りに唱えられない。
サトシ 先ず、こうして分けると、ヤハウェと読める。
マサシ そして、現われたのが、ユダヤ教の神なのさ。
サトシ 次に、こうして分けると、アッラーと読める。
マサシ そして、現われたのが、イスラムの神なのさ。
サトシ すなわち、もともと、同じ神様だったのに、
妄りに、名付けたから、別れてしまったのか。
マサシ うん、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教。
あらゆる神が、その根源は、同じものなのさ。
サトシ ふ~ん、君って、異端な神を、信じているね。
僕の神は、正統な神だから、紹介してあげる。
マサシ ……………………
CASE 多神なき一神 と 一神なき多神
サトミ 一神と多神、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 絶対を説く、一神教は、どういうものかな?
メグミ 一神教は、絶対神を説く、神の教えのことよ。
サトミ 相対を解く、多神教は、どういうものかな?
メグミ 多神教は、八百万を解く、神の教えのことよ。
サトミ 一神を望み、多神に臨まないと、どうなるの?
メグミ 多神なき一神なんて、他神教に過ぎないよ。
サトミ じゃ、多を見とめると、神を認められないの?
メグミ そうよ、他に捕らわれて、神を捉えられない。
サトミ 多神を望み、一神に臨まないと、どうなるの?
メグミ 一神なき多神なんて、無神教に過ぎないよ。
サトミ じゃ、一を認めないと、神を認められないの?
メグミ そうよ、多に囚らわれて、神を捕えられない。
サトミ 一神だけでは、他に捕われ、神が遠くなり、
多神ばかりでは、多に囚われ、神が遠くなる?
メグミ うん、一神と多神、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、多神を透し、一神を徹していくの?
メグミ そうなの、一神を究め、多神を極めていくの。
サトミ ……………………!!