第一章 絶対を説く者 ギリシャ編 あらすじ
主人公(プラトン)は、生きる意味が解からず、
生きる希望も無ければ、生きる欲求も無かったが、
それ故に、善にも悪にも偏らない稀有な存在だった。
世間では、相対主義者(ソフィスト)によって、
ありとあらゆる価値観が、都合良く説かれていた。
人々は、自分に都合の良いものを選び、信じていた。
主人公は、相対主義者に人生の意味を尋ねたが、
人と同じようには、どうしても納得出来なかった。
そして、真理を求め、老師(ソクラテス)を訪ねる。
この老師は、絶対(イデア)を説く存在であり、
老師の元には、多くの若者達が集まって来ていた。
世間は、若者を惑わす悪の教祖として彼を見ていた。
教団の周囲に、多くの人々が集まって来ていた。
あと、数時間で、軍隊が教団に押し入る予定の時、
主人公は群衆を押し分け、施設の中に入ろうとした。
「何者だ、貴様は!」と、指揮官が呼び止めた。
主人公が「真理を尋ねに行く」と正直に答えると、
善にも悪にも偏っていない、主人公の目を見とめて、
指揮官は「面白い、行って来い」と送り出した。
真っ白な主人公が、どんな色に染まって戻るのか。
その色を見て、老師の本性を判断しようと、考えた。
主人公が、施設内に入ると、狂気に満ちていた。
外の人々は、老師を絶対悪と見て、話にならない。
内部の人々は、老師を絶対善と見て、話にならない。
善に偏ろうとも、悪に偏ろうとも、話が通じなかった。
主人公は、老師に会うのを諦め、帰ろうとした。
知恵を求め、老師に学ぶ人が、話にならないとは。
「中も外も大差ない」と、笑いながら、扉を開いた。
すると、その様を見ていた、老婆が呼び止めた。
「笑いながら、出て行くのは、おまえが初めてだ。
笑う者が来たら、連れて来るように、言われている。」
そう言って、老師の元に、老婆は彼を連れて行った。
外の人が訴えるように、魔のような姿でもなく、
内の人々が称えるように、神のような姿でもない。
目の前に現われたのは、陶芸を愛する、老人だった。
老師(ソクラテス)は、待っていたという様子で
微笑みながら、主人公(プラトン)に、話し掛ける。
「内の者は愛情により、私(真理)に集中して、
外の者は嫌悪により、私(真理)に集中している。
どちらも、弟子のように見えて、真の弟子ではない。」
「君は、最後の弟子にして、本物の弟子である。
君に、真理のすべてを託そう、真理を広めなさい。」
そして、老師は洗礼(イニシエーション)を施した。
主人公は、深い意識に導かれ、生が入り混じる。
前世を思い出し、老師に対する愛着が湧き上がり、
「老師を守りたい」と、欲が生じて偏ってしまった。
「本当の愛(プラトニック・ラブ)を知る者が、
偏るべきではない、私に構わず、立ち去りなさい。」
三度、老師は注意するが、弟子は耳を貸さなかった。