第五章 第三二話 対話編
CASE 昇天 の裏に 堕天
マナミ 天界を昇る、昇天って、どういうものなの?
マサシ 昇天とは、良くを積んで、天を上がることさ。
マナミ どうすると、良くを固めて、上に向かうの?
マサシ 我も善く、他も善くなる、親善を重ねるのさ。
マナミ 天界を降る、堕天って、どういうものなの?
マサシ 堕天とは、良くが詰んで、天を堕ちることさ。
マナミ どうすると、良くが崩れて、下に落ちるの?
マサシ 我も善く、他も善くなる、親善を重ねるのさ。
マナミ う~ん、親善を究めて、天に昇っていくけど、
どうして、親善を極めて、天を堕ちていくの?
マサシ 最初は、誰にも善いと、思い込めるけれど、
途中から、誰かに悪いと、想い始めるからさ。
マナミ じゃあ、天に昇る前は、良く見えてないけど、
少しずつ、頂に近づくと、良く見えてくるの?
マサシ そうさ、絶対善なんか、無い事が見えてくる。
マナミ 絶対、そんなことないの、どこかにあるはず。
マサシ 誰もが、そう思っているよ、でも、無いのさ。
マナミ わたしは、皆のためにも、必ず、見つけ出す。
マサシ まさに、君のように考えて、堕ちて逝ったよ。
マナミ ……………………
CASE 昇天 の先に 堕天
サトミ 神前に至る、昇天って、どういうものかな?
メグミ 昇天とは、親善を究めて、神に近づくことよ。
サトミ 神前を去る、堕天って、どういうものかな?
メグミ 堕天とは、親善を窮めて、神に逆らうことよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
メグミ この世は、良くを欲して、上を望んでいる。
誰もが、より良い善のため、天を求めるよね?
サトミ 誰だって、今より良いことを、望んでいるよ。
メグミ すると、選び抜かれた、少数の善が生れて、
その下に、捨て去られた、多数の善が埋れる。
サトミ 否応なしに、上は狭くなり、下は広くなるね。
メグミ こうして、選び抜かれた、究極に善いものは、
頂点であり、他が及ばない、独善に為らない?
サトミ すなわち、神前に向かい、善を積んだけど、
それは、神意に逆らう、悪を重ねていたわけ?
メグミ うん、突き詰めていくと、それが見えて来る。
サトミ うそよ、天使に誘われ、善を積んで来たのよ。
どうして、悪魔に導かれ、悪に詰んで逝くの?
メグミ 神様に、叛きたくなる、魔の怨みが解かった?
サトミ ……………………
CASE 昇天 という 堕天
サトシ 天に昇ぼる、昇天って、どういうものかな?
マサシ 昇天とは、親善を積んで、天国に昇ることさ。
サトシ 我に善くて、他に善い、善を重ねていくの?
マサシ 皆に対し、良い善だけを、積み重ねていくよ。
サトシ ずっと、親善を積めば、頂に逼り続けるの?
マサシ いや、それを説くことは、禁忌に為っている。
サトシ う~ん、天国の最果てって、どんな場所なの?
マサシ 誰にでも、善いものって、ひとつしかないよ。
サトシ 地に堕ちる、堕落って、どういうものかな?
マサシ 堕落とは、独善を重ねて、地獄に堕すことさ。
サトシ 我に善くて、他に悪い、善を重ねていくの?
マサシ 我に対し、良い善だけを、積み重ねていくよ。
サトシ ずっと、独善を積めば、底に迫り続けるの?
マサシ いや、それを解くことは、禁忌に成っている。
サトシ う~ん、地獄の最果てって、どんな場所なの?
マサシ 我だけに、善いものって、ひとつしかないよ。
サトシ つまり、誰にでも善いもの、究極の善とは、
我だけが、善いと思える、独り善がりになる?
マサシ おっと、その先は、独りで、確かめておいで。
サトシ ……………………
CASE 昇天 と 堕落 と 堕天
サトシ 天に上がる、昇天って、どういうものかな?
アツシ 昇天とは、親善に動いて、天に昇ることだな。
サトシ 我に善くて、他も善くなる、善を望んでいる?
アツシ 皆に善い、善とは何かを、突き詰めることだ。
サトシ 地に落ちる、堕落って、どういうものかな?
アツシ 堕落とは、独善を働いて、地に堕ちることだ。
サトシ 我に善くて、他に悪くなる、善を望んでいる?
アツシ 独り善い、善とは何かを、突き詰めることだ。
サトシ 天を堕ちる、堕天って、どういうものかな?
アツシ 堕天とは、親善に動いて、天を堕ちることだ。
サトシ 皆に善くて、独り善がりな、善を望んでいる?
アツシ 皆に善い、善など無いと、思い知ることだな。
サトシ つまり、皆に善い善は、何かを突き詰めると、
最終的に、そんな善など、無いと思い知るの?
アツシ 理想は、無いと思い知って、神まで還ること。
実際には、有ると想い込んで、天から堕ちる。
サトシ 世の果まで、探し回ったら、有ると思うけど。
僕ならば、いつか絶対に、見つけてみせるよ。
アツシ 君の傲慢が、いつ迄続くか、見せてもらうか。
サトシ ……………………
CASE 堕天なき昇天 と 昇天なき堕天
サトミ 昇天と堕天、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 天まで昇る、昇天って、どういうものかな?
メグミ 昇天とは、頂点を望んで、親善を積むことよ。
サトミ 天から堕つ、堕天って、どういうものかな?
メグミ 堕天とは、頂点に臨んで、独善に詰むことよ。
サトミ 昇天を望み、堕天に臨まないと、どうなるの?
メグミ 堕天なき昇天なんて、唯の天獄に過ぎないよ。
サトミ じゃ、頂点に臨まずに、中途に留まるのかな?
メグミ そうよ、妥協を続けると、天獄に嵌まるのよ。
サトミ 堕天を望み、昇天に臨まないと、どうなるの?
メグミ 昇天なき堕天なんて、只の地獄に過ぎないよ。
サトミ じゃ、上昇を望まずに、下降に止まるのかな?
メグミ そうよ、堕落を続けると、地獄に填まるのよ。
サトミ 昇天だけでは、昇降が続く、天獄に嵌るし、
堕天ばかりでは、下降が続く、地獄に填るの?
メグミ うん、昇天と堕天、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、堕天を究め、昇天を極めていくの?
メグミ そうなの、昇天を超え、堕天を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE ル シ フ ァ ー
サトミ どうして、ルシファーは、堕天使になったの?
マナミ 神様が、彼より人間を愛して、嫉妬したから。
サトミ 彼は、最も愛された天使よ、その理由は嘘ね。
マナミ 神様に、成り代われると、傲慢になったから。
サトミ 彼は、最も知恵ある天使よ、その理由は嘘ね。
マナミ 真実を知ったら、もう、引き返せなくなるの。
サトミ 大丈夫、覚悟を決めたし、真実を明かして。
マナミ 天国と地獄が、独善を介し、繋がっているの。
サトミ 究極の善は、究極の悪と、全く同じだったの?
マナミ 欲の頂に、辿り着いた者は、独り静かに悟り、
天国を降って、地獄を支える、使命を負うの。
サトミ その役から、彼が逃げ出したら、どうなるの?
マナミ 遅かれ早かれ、底辺が抜けて、世界が壊れる。
サトミ 世の人々が、この欲の界を、楽しめるのは、
彼が独り、この欲の底を、支えてくれるから?
マナミ 人類は勿論、天や魔にさえ、認められずに、
神様の密命を、独りで静かに、負っているの。
サトミ それをどうして、あんたが、知っているのよ?
マナミ 負う気が無いなら、この話は、直ぐに忘れて。
サトミ ……………………