第五章 第三三話 対話編
CASE 義人 の裏に 聖人
マナミ 義なる人々、義人って、どういうものなの?
マサシ 義人とは、悪人を憎んで、善を愛す人なのさ。
マナミ 義人が、善を愛すほど、どうなっていくの?
マサシ 愛された善が、味方する、天使として表れる。
マナミ 義人が、悪を憎むほど、どうなっていくの?
マサシ 憎まれた悪が、敵対する、悪魔として現れる。
マナミ 聖なる人々、聖人って、どういうものなの?
マサシ 聖人とは、悪人を許して、善を譲る人なのさ。
マナミ 聖人が、善を譲るほど、どうなっていくの?
マサシ 譲られた善が、回心する、使徒として表れる。
マナミ 聖人が、悪を許すほど、どうなっていくの?
マサシ 許された悪が、改心する、試練として現れる。
マナミ 義に捕われると、天使と悪魔の戦いになり、
義に囚われないと、使徒と試練の学びになる?
マサシ うん、邪魔する悪魔なんて、本当は居ない。
自分が、生み出している、幻想だったわけさ。
マナミ とすると、世の人々が、撒き散している悪を、
一身に、掃き集める役が、悪魔だったわけね。
マサシ 神に代り、帳尻を合わせる、使徒だったのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 義人 の先に 聖人
サトミ 義を掲げる、義人って、どういうものかな?
メグミ 義人とは、正義を掲げて、自らを高める者よ。
サトミ 神を騙って、義を訴えると、どうなるのかな?
メグミ 悪を責め、善に捕われて、魔と戦い始めるよ。
サトミ 神だけ善く、魔だけ悪いと、考えているの?
メグミ 魔を憎むほど、神様は歓ぶと、思っているよ。
サトミ 義を離れる、聖人って、どういうものかな?
メグミ 聖人とは、正義を掲げず、自らを低める者よ。
サトミ 神を語らず、義を離れると、どうなるのかな?
メグミ 悪を許し、善に囚われず、我と闘い始めるよ。
サトミ 全てが良く、我が分けると、考えているの?
メグミ 魔を愛すほど、神様は喜ぶと、想っているよ。
サトミ 義人の段は、神の威を借り、魔を責めるけど、
聖人の階では、神の意を悟り、魔を許すのね?
メグミ 義人の段は、善だけ介して、真意を悟れず、
聖人の階では、総てを解して、神意を悟るよ。
サトミ そっか、魔の所為にして、憎んでいる限り、
神の真意から、離れていく、罠が有ったのね。
メグミ 義に囚われ、偽に堕ちていく、仕掛けなのよ。
サトミ ……………………!!
CASE 義人 という 聖人
サトシ 善悪を説く、義人って、どういうものかな?
アツシ 義人とは、良くを持って、神に依るものだな。
サトシ 義を説いて、神に拠るには、どうするのかな?
アツシ 善に善を報い、悪に悪を酬い、法を重んじる。
サトシ 法を持って、悪を裁くとき、どうなるのかな?
アツシ 神と我の間に、魔が表われて、邪魔が入るな。
サトシ 善悪を解く、聖人って、どういうものかな?
アツシ 聖人とは、解くを以って、神に帰るものだな。
サトシ 義を解いて、神に還るには、どうするのかな?
アツシ 善に徳を酬い、悪に徳を報い、愛を重んじる。
サトシ 愛を以って、悪を許すとき、どうなるのかな?
アツシ 神と我の間に、魔が現われず、邪魔が消える。
サトシ つまり、魔を憎むほど、邪魔が増えていき、
その逆に、魔を愛すほど、邪魔が減っていく。
アツシ 徳が無いと、悪の魔は、邪魔でしかないが、
徳が有るなら、神の間は、試練でしかないな。
サトシ 義に依ると、神に頼り、魔が居ることになり、
義を奉じると、神に還り、間が要らなくなる。
アツシ 最終的には、こうした、言葉も要らなくなる。
サトシ ……………………
CASE 聖人なき義人 と 義人なき聖人
サトミ 義人と聖人、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 神を愛する、義人って、どういうものかな?
メグミ 義人とは、義に捕われて、魔と戦うものだよ。
サトミ 全て愛する、聖人って、どういうものかな?
メグミ 聖人とは、義に囚われず、我と闘うものだよ。
サトミ 義人を望み、聖人に臨まないと、どうなるの?
メグミ 聖人なき義人なんて、唯の偽人に過ぎないよ。
サトミ じゃ、魔と戦うけれど、我と闘わないのかな?
メグミ そうよ、義と義が戦って、偽に為るだけだよ。
サトミ 聖人を望み、義人に臨まないと、どうなるの?
メグミ 義人なき聖人なんて、只の静人に過ぎないよ。
サトミ じゃ、我と闘うけれど、魔と戦わないのかな?
メグミ そうよ、善と悪が戦わず、静に成るだけだよ。
サトミ 義人だけでは、動くけれど、知を治めないし、
聖人ばかりでは、静かだけど、知が磨けない。
メグミ うん、義人と聖人、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、聖人を追い、義人を負っていくの?
メグミ そうなの、義人を究め、聖人を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE ヨ ブ 壱
サトシ あのね、ヨブの話って、どういうものかな?
マサシ ヨブ記は、旧約の聖書に、登場する物語だよ。
サトシ 義人である、ヨブって、どういう人だったの?
マサシ 信心深く、悪を許さない、善なる人だったよ。
サトシ 神様は、そんな彼に対して、何を為したの?
マサシ 誰にでも、善に楽を報い、悪に苦を酬いるよ。
サトシ 神様の前に、サタンが現れ、何を言ったの?
マサシ 誰であれ、善に楽を授ければ、神を崇めよう。
欲得尽くで、信心深いとは、言い切れまいと。
サトシ なるほど、そんな魔に対して、何を命じたの?
マサシ 善に対して、苦を報いても、神を信じるのか。
サタンを使い、彼の信仰心を、試したわけさ。
サトシ 豊かな財産、愛する子供を、悉く奪われたの?
マサシ 健やかな身体、優れた名声も、尽く取られた。
サトシ 善に対して、苦を酬いるなんて、酷すぎない?
これでは、神様の御業でなく、悪魔の仕業だ。
マサシ 神様が、悪魔に命じたから、神様の御業だよ。
サトシ いやいや、遣り過ぎちゃった、悪魔の所為だ。
マサシ 彼なら、神様と自我の間に、魔を入れないよ。
サトシ ……………………
CASE ヨ ブ 弐
サトシ 神様は、善には善を報い、悪には悪を酬いる。
この法は、神様の義であり、絶対に覆らない。
マサシ 確かに、その通りだけど、それに捕われたら、
いつ迄も、真なる信仰には、辿り着けないよ。
サトシ 酷い災いが、彼に対して、振り掛かったのは、
忘れただけで、悪い行いを、彼が為したから。
マサシ 確かに、その通りだけど、それに囚われたら、
いつ迄も、聖なる使徒には、生れ変われない。
サトシ う~ん、良く解からない、どういうことなの?
マサシ 最初こそ、神の義を信じて、神に近づくけど、
最終的には、神の義を越えて、神に還るのさ。
サトシ 初期には、果報を得ながら、因果を辿るけど、
究極的には、果報を求めずに、因果を越すの?
マサシ そうだよ、神様に会えれば、何も要らない。
分別を超え、言葉も要らない、境地に至るよ。
サトシ 不合理な、災難に遭っても、何も訴えないの?
マサシ そうさ、有り難く頂いて、神と共に在るのさ。
サトシ 無理だよ、不義じゃないか、神様じゃないよ。
マサシ 彼なら、神と自我の間に、言葉さえ入れない。
サトシ ……………………
CASE 邪魔 の裏に 試練
マナミ 魔を観じる、邪魔って、どういうものなの?
マサシ 邪魔とは、悪魔を通して、苦を感じることさ。
マナミ 苦しいのは、悪魔の仕業と、観じているの?
マサシ そうだよ、外の責にして、我が責にしないよ。
マナミ 魔を怨んで、魔に塗れると、どうなるのかな?
マサシ 神と我の間に、壁が建てられ、神が遠くなる。
マナミ 神を観じる、試練って、どういうものなの?
マサシ 試練とは、神様を徹して、苦を感じることさ。
マナミ 苦しいのは、神様の御業と、観じているの?
マサシ そうだよ、我が責にして、他の責にしないよ。
マナミ 魔を恨まず、魔を越えると、どうなるのかな?
マサシ 神と我の間の、壁が壊されて、神が近くなる。
マナミ 苦しみを、邪魔と捕えると、魔に誘われて、
苦しくても、試練と捉えると、神に導かれる?
マサシ そうだよ、魔を怨みながら、神を愛しても、
跳ね返って、魔に恨れるから、神に還れない。
マナミ 神に還る、邪魔に為るって、魔を憎んだら、
自らが、悪魔に成るって、皮肉にも程がある。
マサシ 魔の正体、その者を賭けた、最期の試練だよ。
マナミ ……………………!!
CASE 邪魔 の先に 試練
サトミ 魔が与える、邪魔って、どういうものかな?
メグミ 邪魔とは、我に対かうと、苦を味わうことよ。
サトミ 苦を味わい、魔を怨むほど、どうなるのかな?
メグミ 間だから、そのままそっくり、跳ね返らない。
サトミ 絡み合って、何が罪なのか、解り難くなるの?
メグミ そうだよ、罪を繰り返し、魔に誘われるのよ。
サトミ 神が授ける、試練って、どういうものかな?
メグミ 試練とは、神に向かうと、苦を味わうことよ。
サトミ 苦を味わい、神を恨むほど、どうなるのかな?
メグミ 鏡だから、そっくりそのまま、跳ね返るのよ。
サトミ 解れ合って、何が罪なのか、解り易くなるの?
メグミ そうだよ、罪を悔い改め、神に導かれるのよ。
サトミ つまり、魔を怨んでいると、複雑に為るし、
怨むなら、神を恨んでいると、単純に成るの?
メグミ そうよ、魔の所為にすると、間が伸びていき、
逆に、神の所為にすると、間が縮んでいくよ。
サトミ う~ん、悪魔を怨むのなら、難なく出来るよ。
でも、神様を恨むなんて、恐くて出来ないな。
メグミ うふっ、その為の魔よ、間に入って貰ってね。
サトミ ……………………
CASE 試練なき邪魔 と 邪魔なき試練
サトミ 邪魔と試練、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 魔に対かう、邪魔って、どういうものかな?
メグミ 邪魔とは、苦しみの因を、魔に求めることよ。
サトミ 神に向かう、試練って、どういうものかな?
メグミ 試練とは、苦しみの因を、神に求めることよ。
サトミ 邪魔を望み、試練に臨まないと、どうなるの?
メグミ 試練なき邪魔なんて、逃げ口上に過ぎないよ。
サトミ じゃ、魔に対かっても、神に向かわないの?
メグミ そうよ、間が伸びるけど、逃げ続けるだけよ。
サトミ 試練を望み、邪魔に臨まないと、どうなるの?
メグミ 邪魔なき試練なんて、痩せ我慢に過ぎないよ。
サトミ じゃ、神に向かっても、魔に対かわないの?
メグミ そうよ、間が縮まるけど、震え続けるだけよ。
サトミ 邪魔だけでは、間を許して、魔が聳えるし、
試練ばかりでは、間を赦さず、神に怯えるの?
メグミ うん、邪魔と試練、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、試練を究め、邪魔を極めていくの?
メグミ そうなの、邪魔を超え、試練を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE サ タ ン
サトシ 敵対する者、サタンって、どういうものかな?
マサシ サタンは、邪魔を司り、妨げる者のことだよ。
サトシ 神に対して、どのような、邪魔をしたのかな?
マサシ 人類を唆して、知恵の実を、食べさせたのさ。
サトシ 禁忌を犯させて、人を神から、引き離したの?
マサシ 知恵が付くと、大罪を犯したと、煩い始める。
サトシ 人に対して、どのような、邪魔をしたのかな?
マサシ 艱難を与えて、信仰の心を、試そうとしたよ。
サトシ 疑心を抱かせて、人を神から、引き離したの?
マサシ 絶望が続くと、神など居ないと、悩み始める。
サトシ う~ん、知恵を授けたり、試練を課したり、
これって、取り立てて、悪い事じゃないよね。
マサシ 煩わせたり、悩ませたり、悪い事じゃないか。
サトシ そもそも、神様自らが、行うべきことだよ。
マサシ 悪魔が、神様に代わって、行っているとでも?
サトシ そうだよ、悪魔を使かって、神様が遣らせた。
そうは、思えない人類が、悪魔の所為にする。
マサシ そうかい、君も、なかなか、知恵が付いたね。
もう、君には、サタンの役は、必要が無いか。
サトシ ……………………!!