物語編
第五章 第三八話 物語編
第五章 治 と 癒
第三八話 外から治める と 内から癒える
すると、王は、目の開かぬ者に、このように告げた。
『君が、何を苦しんでいるのか、私は尋ねない。
君が苦しんでしまうのは、君が苦しみたいからだ。
君が、心から望まないなら、何も苦しむことはない。』
〈法王よ、それは、つまり、こう言われたのか。
目が見えず、心が苦しいのは、すべて自業自得と。〉
『そうだ、在りのままを見れば、そういう事になる。』
〈それは、厳しいことを言ってくれるな、王よ。
王を信じて、訴える民に向かって、その言い草か。
どうして、苦しみ悶えるものに、追い討ちを掛ける。〉
『君を治したいのなら、優しい言葉も掛けよう。
君を癒したいのなら、厳しい言葉に賭けるべきだ。
心から改めないものが、心から救われることはない。』
〈愚かな、王を信じてしまった、俺が愚かだった。〉
『見なさい、君は、自らを信じているに、過ぎない。』
『君の目が見えないのは、真実を認めないからだ。
在りのままを見なさい、今に認められるようになる。』
悔い改めて、真実の涙と共に、真実の芽が開かれる。