物語編
第五章 第四十話 物語編
第五章 選民 と 択法
第四十話 法に民を合す と 民に法を合す
こうして、二人が還った後に、国王、法徳は叫んだ。
『我が裁きを、影から眺めているとは、人が悪い。
とはいえ、尊顔、麗しく、なによりです、我が師よ。』
「裁くものが、裁かれない、法などないぞ、法徳。
とはいえ、優れた裁きだった、私まで捌かれるとは。」
法徳は、微笑むと、人払いを命じて、足元に跪いた。
『今日という日を、心から待ち望んでいました。
我が師よ、さあ、私に代わって、法を解きたまえ。
仕組の九分九厘が整えられて、残る一厘を待つのみ。』
『私は、神の道を外れる、民を法で治めました。
信賞必罰、人の手に拠って、因果応報を布き詰め、
廃り果てた、秩序を取り戻した、それが、十年の昔。』
『次に、神の道を辿れる、民を徳で治めました。
無為自然、神の手に委ねて、自業自得を乗り越え、
忘れ果てた、天意を取り戻した、それが、今日の日。』
『選ばれ方ですか、それは、内密にしてあります。
その象徴に気づいた者だけが、天命を悟るはずです。』