第五章 第三六話 対話編
CASE 修道 の裏に 伝道
マナミ 道を修める、修道って、どういうものなの?
マサシ 修道とは、善を積み重ね、上に高めることさ。
マナミ 道を伝える、伝道って、どういうものなの?
マサシ 伝道とは、善を宣べ伝え、横に広めることさ。
マナミ 横に広げず、上に高めると、どうなるのかな?
マサシ 自分だけ、善を独り占め、独善に嵌まるのさ。
マナミ 上に高めず、横に広げると、どうなるのかな?
マサシ 自分勝手、善を押し付け、独善に填まるのさ。
マナミ どうすれば、独善の世界に、嵌らなくなるの?
マサシ 先ず、善を磨き上げて、他の善を考えるのさ。
マナミ 我にも善く、他にも善い、親善を考えるのね。
マサシ 次に、他に善いものが、自然に伝わるわけさ。
マナミ そっか、善を磨き上げて、至善に達すれば、
もちろん、他にも善いから、自然に伝わると。
マサシ そうさ、無理矢理に、不自然に伝えるものは、
まだ、突き詰めてない、不至善に他ならない。
マナミ そっか、とても良く判った、自然に解ったの。
マサシ 僕は、伝え聞いたことを、傳えていないし、
僕自身、磨き上げたものを、伝えているから。
マナミ ……………………!!
CASE 修道 の先に 伝道
サトミ あたし、とても善いこと、教えて貰ったの。
こんなに、善いことは、皆に教えてあげたい。
メグミ えっと、ちょっと待って、慌てたらダメだよ。
しっかり、自ら修めてから、人に伝えようよ。
サトミ う~ん、こんな善いこと、出来るだけ多く、
可及的に、早く教える方が、良いじゃないの。
メグミ 自分の善が、他人の善と、違うかもしれない。
他の善を、良く考えてから、人に傳えないと。
サトミ この善なら、他の人にも、絶対に善いはずよ。
メグミ あなたも、その善さを、信じているだけなの。
そんな善を、伝え回れば、どうなると思うの?
サトミ 相手にも、その善さを、信じて貰うしかない。
メグミ 伝えて、認められないと、傳えても辛いだけ。
我が善を、信じてくれない、相手を怨むだけ。
サトミ 絶対に、そんなの嫌だよ、分ち合いたいもん。
あなたは、あたしの善、解かってくれるよね?
メグミ ううん、あなたの焦りが、伝わってくるだけ。
サトミ あなたに、あたしの喜びは、傳わってないの?
メグミ 優しさなら、伝わったよ、そこから始めよう。
サトミ ……………………!!
CASE 修道 という 伝道
サトシ 教えを解く、修道って、どういうものかな?
アツシ 修道とは、道を説くには、道を解くことだな。
サトシ 道を解かず、道を説いたら、どうなるのかな?
アツシ 自ら進めない、道を勧めても、誰も進めない。
サトシ 全員が進めない、道を選んだら、どうなるの?
アツシ 焦りばかりを、広めていたら、終末思想だな。
サトシ 教えを説く、伝道って、どういうものかな?
アツシ 伝道とは、道が解けたら、道を説くことだな。
サトシ 道を説かず、道を解いたら、どうなるのかな?
アツシ 他に勧めない、道を進めても、誰も進まない。
サトシ 全員は進めない、道を択んだら、どうなるの?
アツシ 驕りばかりを、修めていたら、選民思想だな。
サトシ 解かないで、説いていたら、終末思想になり、
解いても、説かなければ、選民思想になるか。
アツシ 人類が、終末思想に嵌れば、世界が滅亡し、
逆に、選民思想に填れば、世界に失望するぞ。
サトシ つまり、自ら解いたら、自ずと説いていく。
この道を、修めることが、重要だったわけか。
アツシ その通りだ、君も解けたら、他に説いてくれ。
サトシ ……………………!!
CASE 伝道なき修道 と 修道なき伝道
サトミ 修道と伝道、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 縦に高める、修道って、どういうものかな?
メグミ 修道とは、自らが修めて、道を高めることよ。
サトミ 横に広める、伝道って、どういうものかな?
メグミ 伝道とは、周りに伝えて、道を広めることよ。
サトミ 修道を望み、伝道に臨まないと、どうなるの?
メグミ 伝道なき修道なんて、秘密結社に過ぎないよ。
サトミ もう、陰に隠れる事が、目的に為っているの?
メグミ そうよ、人を操つる事が、意義に成るだけよ。
サトミ 伝道を望み、修道に臨まないと、どうなるの?
メグミ 修道なき伝道なんて、集客組織に過ぎないよ。
サトミ もう、数を増やす事が、目標に為っているの?
メグミ そうよ、人を集める事が、意義に成るだけよ。
サトミ 修道だけでは、修まるのは、孤独感ばかり。
伝道ばかりでは、広がるのは、焦燥感ばかり。
メグミ うん、修道と伝道、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、伝道に依り、修道に拠っていくの?
メグミ そうなの、修道を究め、伝道を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 宣 教 師 壱
サトシ 僕は、神の教えを、世の人に伝えたいんだ。
だから、出来るだけ、多くの人に教えたいよ。
マナミ 自ら、神の教えを、己の中に修めていけば、
自ずと、神の教えが、世の中に伝っていくの。
サトシ そんなの、遠回りだよ、待って居られない。
世界を巡り、多くの人に、教えを説きにいく。
マナミ あなたは、神の名を使って、我を広めるだけ。
神を騙って、我を謳って、世の中を狂わせる。
サトシ なんだよ、僕は真剣なんだ、邪魔しないでよ。
マナミ そうやって、邪魔扱いするの、神の教えなの?
サトシ 違うけど、神様の道を遮るなら、仕方ないよ。
マナミ そんな風に、神の道を騙って、魔逆を説けば、
ますます、我が道が歪んで、邪魔が増えるの。
サトシ 今こそ、神様に信仰心が、試されているんだ。
これ以上、邪魔をするなら、容赦しないから。
マナミ 世界を廻り、こんな危い型を、形に変えるの?
これこそ、神に臨んでない、証そのものなの。
サトシ 何が何でも、僕は行くよ、僕は負けないから。
マナミ それこそ、我が望んでいる、証そのものなの。
サトシ ……………………
CASE 宣 教 師 弐
サトシ 僕も、神の教えを、世の中に伝えたいんだ。
だから、出来るだけ、多くの人を集めたいよ。
マナミ 自ら、神の教えを、己の中に修めていけば、
自ずと、神の教えに、世の人が集ってくるの。
サトシ そんなの、足らないよ、人は多いほど良いよ。
人が多いと、正しいって、思ってくれるから。
マナミ 正しさを、伝えようとせず、想わせるだけ。
それは、魔の誘いであり、神の導きじゃない。
サトシ 最終的に、神に導けるなら、魔で誘っても、
問題ないよ、結果が大事、経過は関係ないよ。
マナミ じゃ、利得で勧めたり、幸福で誘うつもり?
サトシ そうさ、異性で誘ったり、縁故で引くつもり。
マナミ 直接的に、神に導かず、他で誘っていると、
どうしても、その途上で、道に躓いてしまう。
サトシ 最初だけ、勧めるけど、最後まで進めないの?
マナミ いくら、神の教えを、人に伝えたところで、
ひとりも、神に還らず、脇に逸れるだけなの。
サトシ 神まで、還れなくたって、仕方ないじゃない。
マナミ ほら、こういう人が集って、慰め合うばかり。
サトシ ……………………