第五章 第三七話 対話編
CASE 制裁 の裏に 救済
マナミ 人々を裁く、制裁って、どういうものなの?
マサシ 制裁とは、我が罪をして、他に着せることさ。
マナミ 相手の中に、我が罪を写し、相手を裁くの?
マサシ 自らの過ちを、省みないまま、人を責めるよ。
マナミ 人々を救う、救済って、どういうものなの?
マサシ 救済とは、他の罪をして、我に帰することさ。
マナミ 自身の中に、他の罪を移し、相手を救うの?
マサシ 自らの悩みを、顧みないまま、人を助けるよ。
マナミ 絶対に、他に見える要素は、自らに在るの?
マサシ そうだよ、程度の差こそあれ、自らに有るよ。
マナミ 相手を、意地悪に思うのは、どういうとき?
マサシ その悪い所が、現在の自分に、在るときだよ。
マナミ 相手を、可哀想に想うのは、どういうとき?
マサシ その悪い処が、過去の自分に、有ったときさ。
マナミ 裁けば、捌かれるのは、罪が今に在るから、
許すなら、赦されるのは、罪が過ぎ去るから。
マサシ うん、人の振りを見て、我が振り直すわけさ。
マナミ そっか、他を裁かないと、我が救われるのね。
マサシ そうだよ、制裁しなければ、救済されていく。
マナミ ……………………!!
CASE 制裁 の先に 救済
サトミ 律法を司る、制裁って、どういうものかな?
メグミ 制裁とは、先例に従って、罪を重ねることよ。
サトミ 例えば、我が目が潰れたら、敵の目も潰すの?
メグミ そうだよ、血を血で洗うから、罪が消えない。
サトミ 福音を司る、救済って、どういうものかな?
メグミ 救済とは、前例に逆らい、罪を越えることよ。
サトミ 例えば、右の頬を叩れたら、左の頬を向ける?
メグミ そうだよ、血を愛で拭うから、罪が消えるの。
サトミ う~ん、神様が創造された、この世界って、
そもそも、報いたものが、酬いられるはずよ。
メグミ そうよ、復讐するのは、神に在りの世界だよ。
サトミ 神に委ねず、人を裁くと、自ら捌かれるし、
神に任かせて、人を許すと、自ら赦されるの?
メグミ 制裁の段は、他を罰して、我が罪に変えて、
救済の階では、他を救って、我が罪を消すよ。
サトミ つまり、他人を通して、自身を救っているの?
メグミ うん、救済というものは、他人事じゃないの。
サトミ う~ん、一般的な教えとは、正反対じゃない?
メグミ わたしは、裁かないけど、そうかもしれない。
サトミ ……………………!!
CASE 制裁 という 救済
サトミ 苦しいよ、お願いだから、神様、助けてよ。
マナミ 苦しいって、言っているから、苦しくなるの。
サトミ もうっ、あんたなんかには、頼んでいないわ。
あたしは、神に頼んでいるの、あっち行って!
マナミ そうやって、裁いていると、救われないの。
楽とか苦とか、裁かなければ、苦しくないの。
サトミ もう、あんたの言うことは、愛を感じないわ。
あんた、厳し過ぎるのよ、人の話を聞いてよ。
マナミ それなら、全て言ってみて、良く聴いてみる。
サトミ もっと、好きにしたいの、放って置いてよね。
マナミ それなら、思う通りにして、苦しいけれど。
サトミ いやよ、楽になりたいの、救って欲しいのよ。
マナミ それなら、言う通りにして、厳しいけれど。
サトミ あ~ん、どちらを選んだって、ダメじゃない。
あたしは、好きにしたいし、楽にもなりたい。
マナミ だから、言っているのよ、善いとか悪いとか、
想い通り、裁いているから、苦しくなるだけ。
サトミ 結局は、あたしのことを、救えないじゃない。
もう、神様に頼むから、あっちに行ってよね。
マナミ ……………………
CASE 救済なき制裁 と 制裁なき救済
サトミ 制裁と救済、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 応報を司る、制裁って、どういうものかな?
メグミ 制裁とは、裁き捌かれる、律法の仕組なのよ。
サトミ 朗報を司る、救済って、どういうものかな?
メグミ 救済とは、許し赦される、福音の仕組なのよ。
サトミ 制裁を望み、救済に臨まないと、どうなるの?
メグミ 救済なき制裁なんて、唯の非法に過ぎないよ。
サトミ じゃ、法で裁くばかり、愛で許さないのかな?
メグミ そうよ、愛で養わないと、法が腐っていくよ。
サトミ 救済を望み、制裁に臨まないと、どうなるの?
メグミ 制裁なき救済なんて、只の悲報に過ぎないよ。
サトミ じゃ、愛で許すばかり、法で裁かないのかな?
メグミ そうよ、法で育てないと、愛が乱れていくよ。
サトミ 制裁だけでは、糾されても、萎んでしまい、
救済ばかりでは、膨らんでも、歪んでしまう。
メグミ うん、制裁と救済、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、救済を究め、制裁を極めていくの?
メグミ そうなの、制裁を超え、救済を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE ソ ロ モ ン の 審 判
サトシ あのね、ソロモンって、どういうものかな?
マサシ 彼は、イスラエル王国の、古の名君のことさ。
サトシ ある時、二人の女性が、一人の児を連れて、
どちらも、自分が母親と、訴え譲らなかった。
マサシ そこで、ソロモン王は、剣を持って来させ、
その児を、捌いて分けよ、そう裁いて見せた。
サトシ 一方は、殺して構わないと、子を奪ったけど、
他の方は、戮さず生かしてと、児を譲ったよ。
マサシ それを見た、ソロモン王は、子を捌かずに、
許した女性を、本物の母親と、児を授けたよ。
サトシ じゃ、我が子に捕われると、我が児を喪うし、
反対に、我が児を譲ると、我が子が甦えるの?
マサシ うん、我が善に囚われると、我が善を失うし、
反対に、我が善を譲ると、我が徳が蘇えるよ。
サトシ 善と悪に、裁いているから、神が捌かれて、
善だ悪だと、裁かなくなると、神が甦るのか。
マサシ そうだよ、神を裁くかぎり、神は現われない。
サトシ 神様を、裁いているつもりは、無かったんだ。
マサシ 誰だって、自分の神様が欲しい、それだけさ。
サトシ ……………………!!
CASE ソ ロ モ ン の 知 恵
サトシ あのね、ソロモンって、どういうものかな?
マサシ 彼は、ダビデの子である、古の国王のことさ。
サトシ ある時、彼の夢の中に、神様が現れたんだ。
望む物を、汝に授けよう、汝は何を望むのか。
マサシ ソロモンは、知恵を望んで、知恵を授かった。
この答は、神様の御心に、何より適っていた。
サトシ 神様は、アダム達には、知恵を禁じたのに、
どうして、ソロモンには、知恵を授けたわけ?
マサシ 一度も、知恵が生じないと、無いほど良いし、
一旦、知恵が生じたなら、有るほど良いのさ。
サトシ つまり、アダムならば、無い方が良いけど、
その子孫、ソロモンなら、研く方が良いのか。
マサシ そうさ、授けた知恵を、磨いて見なさいと、
神様から、知恵と一緒に、試練を与えられた。
サトシ 知恵を使い、苦を越えたら、国は繁栄して、
知恵に浸かり、楽を貪ったら、国は衰退した。
マサシ 神殿を建てたが、虚飾に満ちた、偶像だった。
サトシ 彼でもダメか、知恵は難しい、無い方が良い。
マサシ 子孫の君に、選択の余地は、無い筈だけどね。
サトシ ……………………