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物語編

第五章 第三八話 対話編

CASE 治す の裏に 癒す

 

マナミ 外の方から、治すって、どういうものなの?
マサシ 治すとは、外から革めて、病を消すことだよ。
マナミ 内の方から、癒すって、どういうものなの?
マサシ 癒すとは、内から改めて、病を消すことだよ。
マナミ う~ん、そもそも、病って、どういうもの?
マサシ 病は、改めるように、教えてくれる、先生さ。
マナミ 過ちを、悔い改めれば、病は消えていくの?
マサシ うん、そのとき、完全に、病は癒えていくよ。
マナミ じゃあ、本心から、過ちを、悔い改めずに、
    外側から、病を取り除いたら、どうなるかな?
マサシ 治して、盗り去った人に、病気が転移して、
    逆に、取り除かれた人には、病気が再発する。
マナミ う~ん、治療家の人って、大勢いると思うの。
マサシ 報酬を伴わず、改心が伴えば、問題は無いよ。
マナミ 大半の場合、改心は伴わず、報酬を伴うの。
マサシ そんなことを、続けたら、病気に為るだけさ。
マナミ 治療家って、人を助けるし、人に喜ばれるの。
    どうして、そういう善い人が、病気に為るの?
マサシ その答えは、僕に聞くより、病に聴くべきさ。
マナミ ……………………

 


 

CASE 治す の先に 癒す

 

サトミ 外から直す、治すって、どういうものかな?
メグミ 治すとは、他の力により、正気に戻すことよ。
サトミ 内から直す、癒すって、どういうものかな?
メグミ 癒すとは、我が力により、正気に戻すことよ。
サトミ 例えば、自ら右に偏るとき、どうなるのかな?
メグミ これ以上、偏らないよう、病気に罹かるのよ。
サトミ 病気を、治そうとするとき、どうなるのかな?
メグミ 強制的に、左に戻すから、一時的に戻るのよ。
サトミ つまり、反省してないから、再び右に偏るの?
メグミ そうだよ、偏らないよう、病気が再発するよ。
サトミ 病気を、癒そうとするとき、どうなるのかな?
メグミ 自発的に、左に戻るから、恒久的に戻るのよ。
サトミ つまり、反省しているから、中央に止まるの?
メグミ そうだよ、偏らないから、病気が完治するよ。
サトミ 治すの段は、改心しないで、正気に帰れず、
    癒すの階では、改心するから、正気に還るの?
メグミ うん、思い知り、改めることが、大事なのよ。
サトミ そっか、そう言われると、そんな気がするな。
メグミ そこはね、心の底から、思い知って欲しいな。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 治す という 癒す

 

サトミ あ~ん、口の中が痛くて、上手く話せない!
マナミ 病は、過ちを教えてくれる、厳しい先生なの。
    だから、直したいのなら、改めるしかないの。
サトミ もう、説教は要らないから、早く治してよ!
マナミ じゃあ、そうなった理由、何か思い当らない?
サトミ 無いわよ、どんな訳が、有るって言いたいの?
マナミ つい、余分なことを、言ってしまったとか。
    それで、肝心なことを、逃してしまったとか。
サトミ あたしが、そんなことを、遣る訳ないでしょ。
    もうっ、苦しくて堪らない、早く治してよね。
マナミ しっかり、苦しまないと、悔い改められない。
    苦しみから、学べるときに、病は癒されるの。
サトミ 苦しいことを、楽しむなんて、正気じゃない。
マナミ 本心から、悔い改めないと、病は癒せないの。
    自ら改めず、外から治しても、他に移るだけ。
サトミ あんたね、自分に移るのが、嫌なだけなん、
    ああっ、痛いじゃないの、舌を噛んじゃった。
マナミ ほら、要らないことを、言ってしまうから、
    それで、学ぶべきことを、逃してしまったの。
サトミ ……………………

 


 

CASE 癒すなき治す と 治すなき癒す

 

サトミ 治すと癒す、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 外なる力で、治すって、どういうものかな?
メグミ 治すとは、人為を持って、正常に戻すことよ。
サトミ 内なる力で、癒すって、どういうものかな?
メグミ 癒すとは、天為を以って、正常に戻すことよ。
サトミ 治すを望み、癒すに臨まないと、どうなるの?
メグミ 癒すなき治すなんて、対症療法に過ぎないよ。
サトミ じゃ、病を治すばかり、病を癒さないのかな?
メグミ そうよ、苦しく無ければ、非を改めないのよ。
サトミ 癒すを望み、治すに臨まないと、どうなるの?
メグミ 治すなき癒すなんて、自然治癒に過ぎないよ。
サトミ じゃ、病を癒すばかり、病を治さないのかな?
メグミ そうよ、苦しく為っても、苦を除かないのよ。
サトミ 治すだけでは、悔い改めず、繰り返すだけ。
    癒すばかりでは、耐え切れず、逃げ出すだけ。
メグミ うん、治すと癒す、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、癒すを追い、治すを負っていくの?
メグミ そうなの、治すを究め、癒すを極めていくの。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 贖い の裏に 償い

 

マナミ 間を与える、贖いって、どういうものなの?
マサシ 贖いとは、過ちを改める、裕りを贈ることさ。
マナミ 間が消える、償いって、どういうものなの?
マサシ 償いとは、過ちを改める、裕りを失うことさ。
マナミ う~ん、良く解らない、どういうことなの?
マサシ それなら、器と水で、喩えることにしようか。
    つまり、器が徳であり、水が欲であるとする。
マナミ Aの器に、水が溜まると、どうなるのかな?
マサシ 器Aに、水が注げなくなる、これが飽くだよ。
マナミ Bの器に、水を捨てると、どうなるのかな?
マサシ 器Aに、水が注げるように、これが贖いだよ。
マナミ Bの器に、水を受けると、どうなるのかな?
マサシ 器Bに、水が注げなくなる、これが償いだよ。
マナミ Aの器に、再び注いだら、どうなるのかな?
マサシ 器Aに、水が注げなくなる、これが償いだよ。
マナミ じゃ、水を注ぐことから、悔い改めないと、
    元より、何も解けていない、罠に嵌っただけ?
マサシ そうだよ、解けて見えて、何も解けていない。
    不治の病に、誰もが罹かる、世の中になるよ。
マナミ ……………………

 


 

CASE 贖い の先に 償い

 

サトミ 魔を与える、贖いって、どういうものかな?
メグミ 贖いとは、過ちを続ける、裕りを贈ることよ。
サトミ 魔が消える、償いって、どういうものかな?
メグミ 償いとは、過ちを続ける、裕りを失うことよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
メグミ それなら、土と塔で、喩えることにするね。
    つまり、土が徳であり、塔が欲であるとする。
サトミ 或る塔で、土が尽きると、どうなるのかな?
メグミ もはや、塔を建てられない、これが飽くだよ。
サトミ 別の塔の、土を与えると、どうなるのかな?
メグミ さらに、塔を建てていける、これが贖いだよ。
サトミ 規格外に、塔が聳えると、どうなるのかな?
メグミ いずれ、塔が崩れてしまう、これが償いだよ。
サトミ 規格外の、塔が壊れると、どうなるのかな?
メグミ さらに、害を広げてしまう、これが償いだよ。
サトミ じゃ、他から土を貰って、塔を建てるほど、
    いつか、崩れ落ちると、被害が大きくなるの?
メグミ うん、自分に止まらずに、周囲まで広がるよ。
    だから、器以上の塔は、自他共に許されない。
サトミ ……………………

 


 

CASE 贖い という 償い

 

サトシ 他から負う、贖いって、どういうものかな?
マサシ 贖いとは、他の業を消し、我に帰すことだよ。
サトシ 自から負う、償いって、どういうものかな?
マサシ 償いとは、我が業を消し、神に還すことだよ。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
マサシ そもそも、すべての魂は、学ぶべき業があり、
    中には、楽しい業もあれば、苦しい業もある。
サトシ 特に人は、苦楽を味わい、知恵を研くため、
    この地上に、生まれて来て、死んで行くよね。
マサシ ところが、瞬間だけ見て、可哀想だと憐み、
    その人生に、課された業を、奪い取っていく。
サトシ 奪った人には、取られた業が、移って来て、
    取られた人には、奪われた業が、蘇って来る。
マサシ つまり、罪を贖った人も、罪を贖われた人も、
    どちらも、最終的には、自ら償うことになる。
サトシ すると、軽々しくは、贖わない方が良いの?
マサシ そうだよ、無智な者は、贖わない方が良いよ。
サトシ 無智なほど、贖いを求めて、知恵を磨けない。
マサシ この悪循環は、贖いたくても、贖えないのさ。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 償いなき贖い と 贖いなき償い

 

サトミ 贖いと償い、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 間が生じる、贖いって、どういうものかな?
メグミ 贖いとは、裕りを与えて、魔に対かうことよ。
サトミ 間が消える、償いって、どういうものかな?
メグミ 償いとは、裕りを越えて、神に向かうことよ。
サトミ 贖いを望み、償いに臨まないと、どうなるの?
メグミ 償いなき贖いなんて、唯の呪いに過ぎないよ。
サトミ じゃ、魔に対かっても、神に向かわないの?
メグミ そうよ、神に向わないと、間に耐えないのよ。
サトミ 償いを望み、贖いに臨まないと、どうなるの?
メグミ 贖いなき償いなんて、只の祝いに過ぎないよ。
サトミ じゃ、神に向かっても、魔に対かわないの?
メグミ そうよ、魔に対わないと、間が持たないのよ。
サトミ 贖いだけでは、魔に呪われ、終いに為るし、
    償いばかりでは、神に祝われ、終いに成るの?
メグミ うん、贖いと償い、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、償いを負い、贖いを追っていくの?
メグミ そうなの、贖いを究め、償いを極めていくの。
サトミ ……………………

 


 

CASE メ シ ア 壱

 

サトシ あのね、メサイアって、どういうものかな?
マサシ メシアは、神の子として、人に贈られた者さ。
サトシ じゃあ、メシアを信じたら、救ってくれるの?
マサシ メシアは、良くを適えず、解くを叶える者さ。
    だから、人を救う時は、悔い改めを説くんだ。
サトシ メシアに、良くを願うと、どうなるのかな?
マサシ 彼を透して、悔いて改めず、魔に誘われるよ。
サトシ メシアに、解くを願うと、どうなるのかな?
マサシ 彼を徹して、悔いて改めて、神に導かれるよ。
サトシ それなら、メシアが現れると、その迎え方で、
    人類は、上がるか下がるか、二極に別れるの?
マサシ うん、救世主に甘えると、魔に堕ちていき、
    反対に、救世主に倣らうと、神に還っていく。
サトシ じゃ、救いを求めるほど、救われなくなり、
    反対に、救いを求めないと、救われるわけか。
マサシ 救世主は、その名の通り、人類を救うけれど、
    自らを、援けない者は、決して助けないのさ。
サトシ それなら、救世主なんて、来る方が困るよね。
マサシ まさに、悔い改めなければ、そうなるだけさ。
サトシ ……………………

 


 

CASE メ シ ア 弐

 

サトシ あのね、メサイアって、どういうものかな?
マサシ メシアは、ヘブライ語で、油を注がれた者さ。
サトシ 油を注いで、聖別するのは、どうしてなの?
マサシ 他と違い、神聖な型であると、報せるためさ。
サトシ つまり、型で起きたことは、形でも起こるの?
マサシ そうだよ、良くも悪くも、彼に起きたことは、
    時を駆けて、世の隅々まで、伝わって行くよ。
サトシ それなら、裏を返すなら、彼に近くなるほど、
    最も簡潔に、良くも悪くも、纏まっているの?
マサシ それゆえ、彼に従がって、彼に倣うならば、
    最も簡略な、試練を通して、悔い改められる。
サトシ 我が罪を、自ら償うのは、変わらないけど、
    余分な業は、救い主により、贖われるわけか。
マサシ この型が、救世主による、救いの本質なのさ。
    外れるほど、贖いが減って、償いが増えるよ。
サトシ なるほど、甘えなければ、救われる仕組だね。
マサシ そうさ、甘えていたら、掬われる仕掛なのさ。
サトシ 僕は、甘え過ぎていたよ、悔い改めないと。
マサシ これは、神聖なる型として、語り継がれるよ。
サトシ ……………………!!

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