物語編
第五章 第四九話 物語編
第五章 在家 と 出家
第四九話 人の家に帰る と 神の家に還る
我に返った智徳は、主に近づき、悲嘆の声を上げた。
「主よ、如何して、斯の如き、仕打ちをするのか。
これでは、誘った者として、彼に会わせる顔が無い。」
〔私は、神の意を示す為に、招かれて来ている。
汝が私に望んだように、神が私に望まれただけだ。
神の家に還って来たのに、何を迷える事が在るのか。〕
「いや、主よ、これでは、余まりにも酷すぎる。
全てが壊れてしまった、全てを供えたというのに。」
〔分からないのか、これこそ、汝らが求めたことだ。〕
〔私が、平和を齎らすとは、思ってはならない。
神の子は、親と子の仲を、引き裂く為に来ている。
神の子より、父や母を愛す者は、神の家に還れない。〕
事も無げに答える主の様に、智徳は唖然とする。
呆然とする彼を置いて、主は立ち去ってしまった。
荒らし尽された神の家が、彼の心を映し出している。
我に返った法徳は、師に近づき、非難の声を上げた。
『師よ、如何して、斯の如き、仕打ちをするのか。
これでは、導いた者として、民に合わせる法が無い。』