物語編
第五章 第五一話 物語編
第五章 祖先 と 子孫
第五一話 土で神を象る と 血で型を模る
人の手を離れて、神の手で進まされる、時の速さ。
彼は、これを、大いに畏それて、涙ながらに訴えた。
「他に何を求めようか、主よ、何卒、王と和解を。
王と和すれば民も解かり、再び迎え入れて呉れよう。」
〔悔い改めるべきは、彼らであって、私ではない。
智徳、汝が行って、神に背く王の命を、神に奉げよ。〕
「主よ、彼こそは、我が愛する、ただ一人の弟子。
出来るものか、これは、あなたも、知っていように。」
〔忘れているのか、これは、汝が、求めたことだ。
子なる神は、汝が願ったことを、叶えるに過ぎない。〕
「他に何を求めようか、主よ、何卒、民と和睦を。
主を神の仇と見なし、この国の民が攻めて来ている。」
〔攻め滅ぼすべきは、彼らであって、神ではない。
智徳、神の兵を率いて、獣と化す民を、滅ぼし尽せ。〕
「おのれ、それでも、おまえは、本当に救い主か。
そんな暴虐を迫る、神が居ようか、魔でも憑いたか。」
〔覚えてないのか、これは、彼が、求めたことだ。
父なる神は、彼が望んだから、臨ませるに過ぎない。〕