物語編
第五章 第五二話 物語編
第五章 男 と 女
第五二話 突き詰める性 と 受け容れる性
心を抉り出されるような、残酷な試練の時は続く。
その夜、主は、弟子と共に、食事をしながら言った。
〔さあ、このパンは私の体、このワインは私の血。
食べなさい、体に血が流れて、型が形に変るだろう。〕
〔言っておこう、この中に、私を裏切る者が居る。
その者が型となり、彼に続いて、多くの者が裏切る。〕
〔私が、パンにワインを浸して、与えるものよ。
為そうと、考えていることを、今すぐ為すが良い。
斯くの如く、体から血を流させ、契約の証しとせよ。〕
他の弟子が囁き合う中、彼は、主を睨み付けた。
白と赤が生命の象徴となり、彼の中で何か弾ける。
差し出された徴を撥ね付けて、闇の中に駆け出した。
最も裏切りそうにない、最も古い弟子が躓いた。
この仕掛に、何も知らない、新しい弟子は驚いた。
彼らの心中を、察してか、熱い弟子が信仰を誓った。
「主よ、彼が躓くことになろうと、私は躓きません。」
〔神を祝うのは良い、彼を呪うのは止めなさい。
鶏が鳴くまでに、あなたも、三度、裏切るだろう。
構わない、すると、あなたにも、彼の背中が見える。〕