第四章 生まれ変わり チベット編 あらすじ
嘗て餞の言葉として、主人公(ナーローパ)は、
老師(ヴァジラ・ヨーギニー)から預言を受けた。
仏陀(ティローパ)を訪ねて、真理を説き広めよと。
十年、仏を探し求めたが、一向に現れなかった。
仕方なく、最初の大学(アカデメイア)を開いて、
学生を育て上げて、真理を説き広めようとしていた。
そこに、少女(老婆の生まれ変わり)が現れる。
彼女の名は、「真理(真の教えの入口)」だったが、
知恵(ダルマ)を知識(カルマ)で説く様子を見て、
「仏陀(老師)が見えてない」と泣き出してしまう。
初心に還った主人公は、再び、仏陀を探す旅に出る。
十年、仏を探し求めたが、一向に現れなかった。
ようやく、仏陀を知っているという、男に出会う。
仏陀に会いたいなら、俺の命令に従えと男は言った。
仏教徒として、固く戒律を守っている主人公に、
五戒(殺すな、盗むな、正直、禁酒、禁欲)の逆、
五仏(殺せ、盗め、騙せ、飲め、耽ろ)を命令する。
仏陀に会いたいという想いから、命令に従うが、
どうしても、「殺せ」の命令には、従えなかった。
それゆえ、仏陀に会うことを、諦めざる得なかった。
仏には会えなかったが、不思議と清々しかった。
大学(ナーランダ)に帰ると、大学の弟子たちや、
美しく育った真理(女の子)に、温かく迎えられた。
遺言は守れなかったが、仏陀に会いたいことも、
使命を果たしたいことも、崇高なこととは雖ども、
煩悩に過ぎなかったことに、主人公は気付かされた。
すると、その様子を傍で見ていた真理(娘)が、
「仏陀なら、私の隣の家に住んでいる」と告げる。
仏陀は外には居なかった、仏陀は内に居たのだった。
主人公が、真理に導かれて、仏の元を訪ねると、
仏陀は、五つの試練を与えた、男そのものだった。
汚れが落ちて、覚めた目の前に、漸く仏陀が現れた。
男(ティローパ)は、カルマを清算するために、
試練を課したことを伝え、積んだ業を法に変えた。
法統の弟子の罪は癒されて、前世の封印が解かれた。
主人公の使命は、「智徳(深遠なる徳)」だった。
夢の中で出会った男は、自分の命そのものだった。
智徳の言っていたことが、当り前だが今なら解かる。
智徳は、菩薩として、天の使命を果たすために、
色界の型を演じるため、欲界に生まれ変っていた。
智徳と法徳は、敵や味方になり、人類の歴史を紡ぐ。
法名を受けた玄徳は、仏陀から欲界に止まらず、
三界(欲界、色界、無色界)の仕組について学び、
そして、三界の隅々まで、表と裏であることを悟る。
例えば、人界が正法のとき、天界は末法になる。
その一方、人界が末法のとき、天界は正法になる。
正法と末法さえも、どちらが良いという訳ではない。
例えば、人界が五戒を守り、天界は五仏を護る。
その一方、人界が五戒を破り、天界は五仏を破る。
五戒と五仏さえも、どちらが良いという訳ではない。
こうして、個としての悟りを完全に修めた智徳は、
仏陀(救世主)と、衆生の済度に向かうことになる。