物語編
第五章 第五五話 物語編
第五章 喜捨 と 断食
第五五話 喜びを与える と 憂いを受ける
「繰り返す、この月の光を、忘れてはならない。
天の教えが下ろされた、定めの夜を聖なる月とし、
年に一月、昼の最中、ここを訪れ、初心を思い出せ。」
「この月に心を合わせ、持てる物を、喜捨せよ。
それが多くなれば、人の眼が開いている証であり、
それが少なくなれば、神の目が閉ざされた徴である。」
「この光に心を合わせ、日の出る間、断食せよ。
それが憂いならば、人の情に溺れている証であり、
それが喜びになれば、神の愛を感じている徴である。」
ここで、智徳は、彼らを見渡しながら、こう言った。
「信仰、礼拝、巡礼、喜捨、断食、五つの行い。
これこそ、神が下ろした教え、天に還る道である。
啓典の民よ、私は、裏まで解き明かす、最後の使徒。」
「優れた弟子よ、私の解く法は、厳しくはないか。」
〈いいえ、使徒よ、いずれは、皆が知らされること。〉
「秀でた弟子よ、主の説く方に、帰りたくないか。」
〈いいえ、使徒よ、いずれも、神に還っていくもの。〉
子は親に似る、彼らは、常軌を越えて、優秀だった。