物語編
第五章 第五六話 物語編
第五章 現世 と 来世
第五六話 今に現れる世 と 次に来たる世
さらに、彼らの中の一人が、神妙な面持ちで尋ねた。
〈使徒よ、こうして明らかにされた、天の使命。
もし、果たせないならば、天命は、どうなるのか。
一度さえも許されないのか、何度まで許されるのか。〉
「神の愛は、何処までも広く、何処までも深い。
命を果たし終えるまで、いつまでも待って下さる。
現世で足りない分は来世、同じものが持ち越される。」
〈使徒よ、こうして明らかにされた、天の仕組。
もし、逃げようとすると、天網は、どうなるのか。
何処にも逃げられないのか、何処に逃げられるのか。〉
「神の目は、何時までも輝き、何時までも鋭い。
罪を償う気になるまで、いくらでも重ねて下さる。
今日で解らない時は明日、逃げるほど罪は重くなる。」
「恐ろしいか、しかし、何も怖れることはない。
神が、その分を越えた道を、歩ませることはない。」
〈いいえ、怖くはありません、薄々観じていたこと。〉
「畏れなさい、誰も、神から零れることはない。
君は、この神の教えを、聴くべくして聞いている。
まさに、この運命の法を、受け容れる時が来たのだ。」