物語編
第五章 第五七話 物語編
第五章 天国 と 地獄
第五七話 受け容れ易い と 受け容れ難い
「啓典の子らよ、いよいよ、生命の実を食べて、
汝ら、一人一人が、唯一の神と、繋がる刻が来た。
君らは、天の命を賜わって、神と等しく成るだろう。」
「もとより、神が創られた世に、善も悪もない。
しかし、知恵の実を食べて、人は神と魔に分けた。
神の裏の顔を魔と呪い、人は神を離れて魔に堕ちた。」
「神と共に在る道、この、予断を許さない未知。
何かを否もうものなら、神を損い、魔が現われて、
魔を憎もうものなら、善に飽くまで、神は隠される。」
「君たちに、神と人の魔を司る、勇気があるか。
君たちに、千の時を一刻に縮める、知恵があるか。
神の唯一性の前に、すべてを委ねる、帰依があるか。」
しわぶき一つ聞こえない、透き通る月の光の中、
時空を越えて、導かれる者たちの、視線が集まる。
智徳は、深淵に隠されていた、天命を明らかにした。
「天の命に従い、神の子を屠り、天に送り返す。
今にも、王の民と主の民が、戦渦に巻き込まれる。
最小の犠牲をもって、この益なき争いを、回避する。」