第五章 第五三話 対話編
CASE 信 の裏に 行
マナミ 仰ぎ信じる、信仰って、どういうものなの?
マサシ 信仰とは、神の道を仰ぎ、神を信じることさ。
マナミ じゃあ、神を信じていれば、神に近づけるの?
マサシ いや、神を確めなければ、信じられなくなる。
マナミ 確めず、神を信じていると、どうなるのかな?
マサシ 最終的に、我を信じていたと、思い知るのさ。
マナミ 行を修める、修行って、どういうものなの?
マサシ 修行とは、神の道を修め、神を確めることさ。
マナミ じゃあ、神を確めていれば、神に近づけるの?
マサシ いや、神を信じなければ、確められなくなる。
マナミ 信じず、神を確めていると、どうなるのかな?
マサシ 終極的に、我を確めていたと、想い知るのさ。
マナミ 信じようと、確めなければ、神に近づかず、
確かめようと、信じなければ、我に近づくの?
マサシ そうさ、神の道とは、我を超える道だから、
神の前に、総てが覆る、深淵が潜んでいるよ。
マナミ う~ん、神に近づくほど、美しくなる我を、
究極的に、神に捧げないと、神に還れないの?
マサシ そうさ、知れば知るほど、真理は深遠なのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 行のない信 と 信のない行
サトミ 信と行、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 神を信じる、信仰って、どういうものかな?
メグミ 信仰とは、我を躱わして、神を信じることよ。
サトミ 我を修める、修行って、どういうものかな?
メグミ 修行とは、我を交わして、神を確めることよ。
サトミ 信を重んじて、行を軽んじると、どうなるの?
メグミ 行のない信なんて、単なる妄信に過ぎないよ。
サトミ じゃ、神を信じるだけ、行を修めないのかな?
メグミ そうよ、行を修めないと、我を信じているよ。
サトミ 行を重んじて、信を軽んじると、どうなるの?
メグミ 信のない行なんて、単なる愚行に過ぎないよ。
サトミ じゃ、行を修めるだけ、神を信じないのかな?
メグミ そうよ、神を信じないと、我を行じているよ。
サトミ 信だけは、神を信じている、我を信じるし、
行ばかりは、神を確めている、我を行じるの?
メグミ そうよ、信と行、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、行に依りながら、信に拠っていくの?
メグミ うふっ、信を究めながら、行を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 信 仰 告 白
サトシ あのね、シャハーダは、どういうものかな?
マサシ それはね、イスラム教の、信仰告白のことさ。
神は唯一で、彼は使徒だと、信を明かにする。
サトシ どうして、決められた通りに、言うのかな?
マサシ 聖なる型に、嵌まることが、信だからなのさ。
サトシ どうして、口に出さなければ、行けないの?
マサシ 聖なる形が、生じることが、行だからなのさ。
サトシ 思いのままに、心の中で、唱えたらだめなの?
神の信仰に、形は無いって、思うんだけどね。
マサシ 最終的に、そうなるけど、初めは行けないよ。
想いのまま、欲を唱えれば、神から遠ざかる。
サトシ とすると、告白に限らず、礼拝や巡礼など、
聖なる道を、歩もうとする、契約と言えるの?
マサシ 決った型から、逸れなければ、成就に対い、
極まった型から、外れていれば、破棄に向う。
サトシ じゃ、型が細かいのは、契約を意識するため。
マサシ そうさ、果すか破るかを、頻繁に自覚させる。
サトシ じゃ、厳しい教えほど、信じた方が得かもね。
マサシ それは、型から外れてて、告白とは言えない。
サトシ ……………………
CASE 六 つ の 信
サトシ あのね、六つの信って、どういうものかな?
マサシ それはね、イスラム教で、信じるべきものさ。
サトシ じゃ、アッラー、神は、どういうものかな?
マサシ 神とは、唯一にして、絶対である存在なのさ。
サトシ マラーイカ、天使って、どういうものかな?
マサシ 天使は、神の使命を伝える、天人のことだよ。
サトシ じゃ、キターブ、啓典は、どういうものかな?
マサシ 啓典は、神の言葉を著わす、書物のことだよ。
サトシ じゃ、ラスール、使徒は、どういうものかな?
マサシ 使徒は、神の啓示を預かる、人間のことだよ。
サトシ じゃ、アーヒラ、来世は、どういうものかな?
マサシ 来世は、神の審判が現れる、世界のことだよ。
サトシ じゃ、カダル、定命って、どういうものかな?
マサシ 定命は、神の計画が定める、予定のことだよ。
サトシ とすると、霊や言や人を、介しはするけど、
すべて、神の御心だと、受け容れることなの?
マサシ うん、それが出来るなら、来世で神に帰るよ。
サトシ じゃあ、何も介さないなら、どうなるのかな?
マサシ うん、それが出来るなら、現世で神に還るよ。
サトシ ……………………!!
CASE 五 つ の 行
サトシ あのね、五つの行って、どういうものかな?
マサシ それはね、イスラム教で、行なうべきものさ。
サトシ シャハーダ、告白って、どういうものかな?
マサシ 告白は、口に表わすことで、神を思うことさ。
サトシ じゃ、サラート、礼拝は、どういうものかな?
マサシ 礼拝は、身に現わすことで、神を想うことさ。
サトシ じゃ、ハッジ、巡礼って、どういうものかな?
マサシ 巡礼は、地に向かうことで、神を思うことさ。
サトシ じゃ、サダカ、喜捨って、どういうものかな?
マサシ 喜捨は、楽を与えることで、神を想うことさ。
サトシ じゃ、サウム、断食って、どういうものかな?
マサシ 断食は、苦に耐えることで、神を思うことさ。
サトシ とすると、口や身や意を、介しはするけど、
すべて、神を偲ぶため、行なうものなのかな?
マサシ うん、それが出来るなら、来世で神に帰るよ。
サトシ ここで、神様に臨まないで、天国を望んだら?
マサシ それでは、神を利用する、真逆の行いになる。
サトシ ううん、天国に行くために、信仰したいんだ。
マサシ うん、それが出来るなら、現世で獄に入るよ。
サトシ ……………………
CASE 律法 と 福音 と 帰依
マナミ タウラート、律法って、どういうものなの?
マサシ 律法とは、モーセをして、授かった教えだよ。
マナミ インジール、福音って、どういうものなの?
マサシ 福音とは、イエスをして、授かった教えだよ。
マナミ クルアーン、帰依って、どういうものなの?
マサシ 帰依とは、ムハンマドが、授かった教えだよ。
マナミ 初めに、神の法を説くのは、どうしてなの?
マサシ 善を勧め、悪を懲らして、善を育てるためさ。
マナミ 続いて、神の愛を説くのは、どうしてなの?
マサシ 善を諫め、悪を慈しんで、悪を育てるためさ。
マナミ 後から、神の行を説くのは、どうしてなの?
マサシ 我を諦め、善悪を越える、神に育てるためさ。
マナミ 善を愛せば、悪を憎み、愛が冷えていくし、
悪を許したら、善が病み、法を損っていくの?
マサシ それゆえに、両極を味わい、時機が来たら、
善悪の源、自我を捨てる、服従を説くわけさ。
マナミ ここで、神なんて知らない、支配されるかと、
それぞれ、我が儘に生きたら、どうなるかな?
マサシ すると、人間に支配される、元の無法に戻る。
マナミ ……………………
CASE 律 法 の 衆
サトシ あのね、律法の宗って、どういうものかな?
マサシ それはね、聖別の考えを、人類に授けたら、
どのような、型が生じるか、教えたものだよ。
サトシ 授かった、聖別を玩ぶと、どうなるのかな?
マサシ 神に選れて、自ら優れない、偽の聖別になる。
サトシ 他を低くして、自ら高くする、考えになるの?
マサシ 他を軽んじ、自ずから蔑まれる、教えになる。
サトシ 与かった、聖別を培うと、どうなるのかな?
マサシ 神に選れて、自らも優れる、真の聖別になる。
サトシ 他を高くして、自ら高くする、考えになるの?
マサシ 他を重んじ、自ずから尊ばれる、教えになる。
サトシ 授かって、弄んでいると、負の聖別になり、
与ってから、養っていけば、正の聖別になる。
マサシ 聖別とは、毒にも薬にもなる、諸刃の剣だよ。
徒に授けて、人に教えたら、いけないものさ。
サトシ 実際の所、与えられた聖別を、使い熟せたの?
マサシ それは、法の衆の行く末を、追えば解かるよ。
サトシ 法の衆は、選民を訴え、賎民に堕ちていった。
マサシ いずれ、世界の隅々まで、その型が広がるよ。
サトシ ……………………
CASE 福 音 の 衆
サトシ あのね、福音の宗って、どういうものかな?
マサシ それはね、贖罪の考えを、人類に授けたら、
どのような、型が生じるか、教えたものだよ。
サトシ 授かった、贖罪を玩ぶと、どうなるのかな?
マサシ 神に贖われ、自ら償わない、偽の贖罪になる。
サトシ 他に償わせて、自ら償わない、考えになるの?
マサシ 自らが詰み、神に抗がうという、教えになる。
サトシ 与かった、贖罪を培うと、どうなるのかな?
マサシ 神に贖われ、自らで償なう、真の贖罪になる。
サトシ 自ら償い、他には償わせない、考えになるの?
マサシ 自らが償い、神を崇めるという、教えになる。
サトシ 授かって、弄んでいると、負の贖罪になり、
与ってから、養っていけば、正の贖罪になる。
マサシ 贖罪とは、毒にも薬にもなる、諸刃の剣だよ。
徒に授けて、人に教えたら、いけないものさ。
サトシ 実際の所、与えられた贖罪を、使い熟せたの?
マサシ それは、愛の衆の行く末を、追えば解かるよ。
サトシ 愛の衆は、朗報を訴え、応報に堕ちていった。
マサシ いずれ、世界の隅々まで、その型が広がるよ。
サトシ ……………………
CASE 帰 依 の 衆
サトシ あのね、帰依の宗って、どういうものかな?
マサシ それはね、服従の考えを、人類に授けたら、
どのような、型が生じるか、教えたものだよ。
サトシ 授かった、服従を玩ぶと、どうなるのかな?
マサシ 神に任せて、自ら負わない、偽の服従になる。
サトシ 他に負わせて、自ら負わない、考えになるの?
マサシ 自らが追い、神に着せるという、教えになる。
サトシ 与かった、服従を培うと、どうなるのかな?
マサシ 神に任せて、自らでも負う、真の服従になる。
サトシ 自ら負い、他には負わせない、考えになるの?
マサシ 自らが負い、神に委ねるという、教えになる。
サトシ 授かって、弄んでいると、負の服従になり、
与ってから、養っていけば、正の服従になる。
マサシ 服従とは、毒にも薬にもなる、諸刃の剣だよ。
徒に授けて、人に教えたら、いけないものさ。
サトシ 実際の所、与えられた服従を、使い熟せたの?
マサシ それは、行の衆の行く末を、追えば解かるよ。
サトシ 行の衆は、服従を訴え、征服に堕ちていった。
マサシ いずれ、世界の隅々まで、その型が広がるよ。
サトシ ……………………
CASE 愛のない法 と 法のない愛
サトミ 法と愛、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ ユダヤの教え、法って、どういうものかな?
メグミ 法の教えは、法を通して、真を知ることだよ。
サトミ キリスト教の、愛って、どういうものかな?
メグミ 愛の教えは、愛を徹して、神を知ることだよ。
サトミ 法を重んじて、愛を軽んじると、どうなるの?
メグミ 愛のない法なんて、険しい教えに過ぎないよ。
サトミ じゃ、法に捕われて、愛が冷えてしまうの?
メグミ そうよ、法が縛るから、心が荒んでしまうよ。
サトミ 愛を重んじて、法を軽んじると、どうなるの?
メグミ 法のない愛なんて、卑しい教えに過ぎないよ。
サトミ じゃ、愛に囚われて、法が歪んでしまうの?
メグミ そうよ、愛に縋るから、心が甘えてしまうよ。
サトミ 法だけでは、愛を喪って、暴に堕ちていき、
愛ばかりでは、法を失って、情に落ちていく。
メグミ そうよ、法と愛、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、愛に依りながら、法に拠っていくの?
メグミ うふっ、法を究めながら、愛を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 行のない愛 と 愛のない行
サトミ 愛と行、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ キリスト教の、愛って、どういうものかな?
メグミ 愛の教えは、愛を望んで、神に依ることだよ。
サトミ イスラム教の、行って、どういうものかな?
メグミ 行の教えは、行に臨んで、神に拠ることだよ。
サトミ 愛を重んじて、行を軽んじると、どうなるの?
メグミ 行のない愛なんて、浮いた教えに過ぎないよ。
サトミ じゃ、愛に捕われて、行が乱れてしまうの?
メグミ そうよ、愛に縋るから、心が憂いてしまうよ。
サトミ 行を重んじて、愛を軽んじると、どうなるの?
メグミ 愛のない行なんて、渇いた教えに過ぎないよ。
サトミ じゃ、行に囚われて、愛が枯れてしまうの?
メグミ そうよ、行に拘るから、心が乾いてしまうよ。
サトミ 愛だけでは、行を喪って、情に堕ちていき、
行ばかりでは、愛を失って、業に落ちていく。
メグミ そうよ、愛と行、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、行に依りながら、愛に拠っていくの?
メグミ うふっ、愛を究めながら、行を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 法のない行 と 行のない法
サトミ 行と法、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ イスラム教の、行って、どういうものかな?
メグミ 行の教えは、行を介して、道を辿ることだよ。
サトミ ユダヤの教え、法って、どういうものかな?
メグミ 法の教えは、法を解して、理を辿ることだよ。
サトミ 行を重んじて、法を軽んじると、どうなるの?
メグミ 法のない行なんて、偏った教えに過ぎないよ。
サトミ じゃ、行に捕われて、法が曲ってしまうの?
メグミ そうよ、行に拘るから、心が傾いてしまうよ。
サトミ 法を重んじて、行を軽んじると、どうなるの?
メグミ 行のない法なんて、騙った教えに過ぎないよ。
サトミ じゃ、法に囚われて、行が黙ってしまうの?
メグミ そうよ、法が縛るから、心を瞞してしまうよ。
サトミ 行だけでは、法を喪って、業に堕ちていき、
法ばかりでは、行を失って、暴に落ちていく。
メグミ そうよ、行と法、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、法に依りながら、行に拠っていくの?
メグミ うふっ、行を究めながら、法を極めていくの。
サトミ ……………………!!