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物語編

第五章 第五四話 対話編

CASE 礼拝 の裏に 巡礼

 

マナミ ねぇ、サラート、礼拝は、どういうものなの?
マサシ 礼拝は、一日に五回は、心を神に合すことさ。
マナミ どうして、礼拝の回数が、決められているの?
マサシ 回が減れば、信を損ったと、分かるからだよ。
マナミ それなら、日々の礼拝は、不断の信仰の証し?
マサシ そうさ、弛みなく続けると、礼に霊が宿るよ。
マナミ じゃ、ハッジ、巡礼って、どういうものなの?
マサシ 巡礼は、一生に一度は、身を神に会すことさ。
マナミ どうして、聖地の巡礼が、定められているの?
マサシ 機が熟せば、信を成したと、解かるからだよ。
マナミ それなら、一生の巡礼は、普段の信仰の証し?
マサシ そうさ、緩みなく続けると、霊が神に導くよ。
マナミ とすると、形から入って、心を合せていけば、
    次第に、霊が宿るから、礼拝が巡礼になるの?
マサシ そうだよ、こうして、自然に導かれた巡礼は、
    心から、神様に出会い、歓喜に満たされるよ。
マナミ じゃ、巡礼に行くことを、誇ろうとしたり、
    反対に、行けないって、悩まなくてもいいの?
マサシ そうだよ、日々の礼拝に、努めるだけで良い。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 礼拝 の先に 巡礼

 

サトミ 聖地を拝む、礼拝って、どういうものかな?
メグミ 礼拝とは、我が心をして、神に合せるものよ。
サトミ 心を持って、聖地を向くと、どうなるのかな?
メグミ 遅かれ早かれ、全身を伴って、聖地に赴くよ。
サトミ 聖地に赴く、巡礼って、どういうものかな?
メグミ 巡礼とは、我が身をして、神に会せるものよ。
サトミ 身を以って、聖地に至ると、どうなるのかな?
メグミ 早かれ遅かれ、全霊を伴って、神様に到るよ。
サトミ 礼拝の段は、我が心をして、神に対かって、
    巡礼の階では、我が身をして、神に向かうの?
メグミ そうよ、普段の日の、礼拝を積み重ねてこそ、
    あるとき、特別な日の、巡礼の望みが適うの。
サトミ う~ん、それなら、たとえ、礼拝しなくても、
    実際、巡礼に行けるなら、礼拝と同じだよね?
メグミ ううん、寧ろ逆よ、たとえ、巡礼しなくても、
    日々、礼拝を続けるなら、巡礼と同じになる。
サトミ 自らに、神様が宿って、自らが聖地に為るの?
    いやいや、そんなことは、絶対に在り得ない。
メグミ うふっ、全身全霊を以って、確かめてみてね。
サトミ ……………………

 


 

CASE 礼拝 という 巡礼

 

サトミ ちょっと、そんなところで、何をしているの?
    あたし、聖地に行くから、邪魔だから退いて。
マナミ わたしは、聖地に行く、余裕なんて無いから、
    ここで、心を神に合せて、礼拝をしているの。
サトミ 幾ら、礼拝だからって、場所を取り過ぎよ。
マナミ それは、申し訳ないけど、形が決っているの。
    先ず、外から合わせて、少しずつ心も合せる。
サトミ 神様に、はじめから、心を合わせられたら、
    形だけの、そんなこと、しなくても良いのよ。
マナミ 確かに、そうだけど、少しずつ積み重ねるの。
    心が、満たされるまで、形から入るしかない。
サトミ 面倒ね、あたしには、そんな形は要らないの。
    あたしは、全て省いて、聖地に行って来るわ。
マナミ そんなこと、言ってたら、総て無駄になるの。
    それでは、身を会わせても、心が合さらない。
サトミ 巡礼に、行ったつもりで、観光に行っただけ?
マナミ うん、自慢の種にして、聖地を汚すだけなの。
サトミ うそよ、無駄になんかに、為るわけないわよ!
マナミ 不安なら、彼方も礼拝から、始めたらいいの。
サトミ ……………………

 


 

CASE 巡礼なき礼拝 と 礼拝なき巡礼

 

サトミ 礼拝と巡礼、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 心を合せる、礼拝って、どういうものかな?
メグミ 礼拝とは、聖地に合わせ、心を届けるものよ。
サトミ 身を会せる、巡礼って、どういうものかな?
メグミ 巡礼とは、聖地に合わせ、身を届けるものよ。
サトミ 礼拝を望み、巡礼に臨まないと、どうなるの?
メグミ 巡礼なき礼拝なんて、唯の慣行に過ぎないよ。
サトミ じゃ、心を合わせても、身を会せないのかな?
メグミ そうよ、身を届けないと、慣れ過ぎるだけよ。
サトミ 巡礼を望み、礼拝に臨まないと、どうなるの?
メグミ 礼拝なき巡礼なんて、只の観光に過ぎないよ。
サトミ じゃ、身を会わせても、心を合せないのかな?
メグミ そうよ、心を届けないと、通り過ぎるだけよ。
サトミ 礼拝だけでは、行が籠らず、神が遠いまま。
    巡礼ばかりでは、信が篭らず、神が像のまま。
メグミ うん、礼拝と巡礼、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、巡礼を追い、礼拝を負っていくの?
メグミ そうなの、礼拝を究め、巡礼を極めていくの。
サトミ ……………………!!

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