第五章 第五六話 対話編
CASE 現世 の裏に 来世
マナミ 今に現れる、現世って、どういうものなの?
マサシ 現世とは、天の命を享け、世に生れることさ。
マナミ 世に生まれ、命が解らないと、どうなるの?
マサシ たとえ、世に生まれても、命を活かせないよ。
マナミ それなら、生きながら、天の命を探し出して、
懸命に、努め上げるとき、命が活かされるの?
マサシ そうだよ、使命に捧げると、生が輝けるのさ。
マナミ 次に来たる、来世って、どういうものなの?
マサシ 来世とは、天の命を受け、世に埋れることさ。
マナミ 世に生まれ、命を果せないと、どうなるの?
マサシ たとえ、生を終えようと、命は終らないのよ。
マナミ それなら、生きながら、天の命を勤め上げて、
完全に、果し尽くすとき、命を負えられるの?
マサシ そうだよ、使命を果たすと、天に還れるのさ。
マナミ つまり、天の命を果すために、生まれるけど、
天の命を、果たさない限り、天に還れないの?
マサシ そうさ、天の命を果たすまで、生が続くのさ。
マナミ 前世から現世、現世から来世と、続くわけね。
マサシ この話しは、そろそろこれで、最後にしたい。
マナミ ……………………
CASE 現世 の先に 来世
サトミ 我に生じる、現世って、どういうものかな?
メグミ 現世とは、この世の中に、命を受けることよ。
サトミ 他に生じる、来世って、どういうものかな?
メグミ 来世とは、あの世の中に、命を受けることよ。
サトミ あたし、この世の中に、飽いて来ちゃったし、
早いとこ、あの世の中に、生まれ変わりたい。
メグミ ううん、この世の中で、良く生きられないと、
絶対、あの世の中で、良く生きられないのよ。
サトミ じゃあ、今の人の生を、良く果たせないなら、
この先も、他の別の命を、良く果たせないの?
メグミ そうよ、今に果たせないと、次に回されるの。
即ち、来世とは名ばかり、現世が続くだけよ。
サトミ 認めて、現世に励めば、来世も善くなるし、
逃げ回り、現世を怠れば、来世も悪くなるの?
メグミ そうよ、今に解からないと、次に回されるの。
そろそろ、逃げ回わらないで、確り認めよう。
サトミ ううん、だって、あたしは、そうは思わない。
来世には、現世を越える、何かが有るはずよ。
メグミ 私はね、この繰り返しには、飽いて来たなあ。
サトミ ……………………
CASE カ ダ ル
サトシ カダル、定命って、どういうものなのかな?
マサシ 定命とは、人の命は、神に定められることさ。
サトシ う~ん、何が起こるか、予め決っているなら、
努めても、勉めなくても、何も変わらないの?
マサシ ううん、努めて果たしたら、次の命になるし、
その逆に、勉めず果さないと、同じ命になる。
サトシ 誰もが、果たすべき使命を、授かっていて、
果たせば、遂げるべき神命が、与えられるの?
マサシ そうさ、超えるべき試練を、乗り越えれば、
人の世を、生きながらに、神の世を活きるよ。
サトシ そっか、命を果たせば、生まれ変わるのか。
僕は、命が分らないけど、どうしたら良いの?
マサシ 使命が、全く解らなくても、別に構わないよ。
授かった、生を活かせるなら、それが神命さ。
サトシ たとえ、気の毒な人の生を、歩んでいようと、
前向きに、活きていれば、それが神の命なの?
マサシ そうさ、悲惨な生ほど、それに気づきやすい。
サトシ 何が幸で、何が不幸せか、判らなくなったよ。
マサシ 神様は、それも含めて、予め決めていたのさ。
サトシ ……………………!!
CASE 来世なき現世 と 現世なき来世
サトミ 現世と来世、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 今に生きる、現世って、どういうものかな?
メグミ 現世とは、今に生まれて、命を果たすことよ。
サトミ 次に生きる、来世って、どういうものかな?
メグミ 来世とは、次に生まれて、命を果たすことよ。
サトミ 現世を望み、来世に臨まないと、どうなるの?
メグミ 来世なき現世なんて、最後の生に過ぎないよ。
サトミ じゃ、今に生きていて、次を生きていないの?
メグミ そうよ、命が果されると、生が消えていくよ。
サトミ 来世を望み、現世に臨まないと、どうなるの?
メグミ 現世なき来世なんて、最悪の生に過ぎないよ。
サトミ じゃ、次に生きていて、今を生きていないの?
メグミ そうよ、命を果さないと、生が失せていくよ。
サトミ 現世だけでは、命を果して、世が消えるし、
来世ばかりでは、命を遂げず、世が失せるの?
メグミ うん、現世と来世、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、来世を究め、現世を極めていくの?
メグミ そうなの、現世を超え、来世を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 宿命 の裏に 天命
マナミ 昔からの命、宿命って、どういうものなの?
マサシ 宿命とは、小さな我から、捕える命のことさ。
マナミ 小さな我が、命を眺めると、どう見えるの?
マサシ 前生の自分と、今生の自分は、別人格なのさ。
マナミ 小さな我は、今が苦しいと、どう考えるの?
マサシ 前世の自分が、悪を為したと、考えるんだよ。
マナミ 天からの命、天命って、どういうものなの?
マサシ 天命とは、大きな我から、捉える命のことさ。
マナミ 大きな我が、命を眺めると、どう見えるの?
マサシ 前生の自分と、今生の自分は、同人格なのさ。
マナミ 大きな我は、今が苦しいと、どう考えるの?
マサシ 今生の自分が、全て選んだと、考えるんだよ。
マナミ 宿命と天命、どちらの方が、正しいのかな?
マサシ もし、他の責にすれば、我が小さくなるし、
反対に、我が責にすれば、我が大きくなるよ。
マナミ 我が、大きくなるほど、前世を思い出すの?
マサシ そうさ、受け容れる物に、相応しい者になる。
マナミ じゃ、前世を知らないのは、そう選んだのね。
マサシ そうさ、そう考えるほど、色々と思い出せる。
マナミ ……………………!!
CASE 宿命 と 天命 と 運命
マナミ ねぇ、カダル、天命って、どういうものなの?
マサシ 天命は、人生は、神に決められていることさ。
マナミ でも、人には、自由意思が有るんじゃないの?
マサシ そうさ、天命は、宿命と運命に分かれるのさ。
マナミ じゃ、カダル、宿命って、どういうものなの?
マサシ 宿命は、神から捉えた、天命のことなのさ。
マナミ 神の命に、人が従がうと、どうなるのかな?
マサシ 同じ民に対して、次の命が、授けられるのさ。
マナミ 神の命に、人が逆らうと、どうなるのかな?
マサシ 違う民に対して、同じ命が、与えられるのさ。
マナミ じゃ、ガター、運命って、どういうものなの?
マサシ 運命は、人から捉えた、天命のことなのさ。
マナミ 神の命に、人が従がうと、どうなるのかな?
マサシ 同じ人に対して、次の命が、授けられるのさ。
マナミ 神の命に、人が逆らうと、どうなるのかな?
マサシ 同じ人に対して、同じ命が、与えられるのさ。
マナミ そっか、こう考えれば、決定論でありながら、
人間には、自由意志があると、考えられるね。
マサシ 理解が早い、次なる教えも、君に説こうかな。
マナミ ……………………!!