第五章 第五八話 対話編
CASE 地獄 の裏に 煉獄
マナミ ジャハンナム、地獄って、どういうものなの?
マサシ 地獄とは、我がために、他と戦う獄のことさ。
マナミ じゃあ、地獄の至るのは、どういうときなの?
マサシ 我が為に、敵を苦しめると、地獄に堕ちるよ。
マナミ 地の獄から、抜け出せるのは、どういうとき?
マサシ 我が為に、敵を許せるとき、抜け出せるのさ。
マナミ 目には目を、歯には歯をでは、抜け出せない?
マサシ そうだよ、我を愛するよう、敵を愛するのさ。
マナミ プルガトリウム、煉獄は、どういうものなの?
マサシ 煉獄とは、神のために、他と闘う獄のことさ。
マナミ じゃあ、煉獄に到るのは、どういうときなの?
マサシ 神の為に、敵を苦しめると、煉獄に落ちるよ。
マナミ 煉の獄から、抜け出せるのは、どういうとき?
マサシ 神の為に、敵を赦せるとき、抜け出せるのさ。
マナミ 愛を以って、悪に報いるとき、抜け出せるの?
マサシ そうだよ、神を愛するよう、他を愛するのさ。
マナミ 我がために、侵した罪は、神を感じ難いけど、
神のため、犯した罪は、神を感じ易くなるの?
マサシ そうさ、神を感じるだけ、敵を許し易いのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 地獄 の先に 煉獄
サトミ 苦が増える、地獄って、どういうものかな?
メグミ 地獄とは、悪業を積んで、罪を重ねる獄だよ。
サトミ どうすると、地獄の世界に、堕ちていくの?
メグミ 苦しんだなら、苦しめようと、考えるとだね。
サトミ 業の連鎖に、身を委ねると、罪が重なるの?
メグミ 同じ道を、幾ら選んでも、罪は消えないのよ。
サトミ どうなると、業の連鎖から、抜け出せないの?
メグミ 神を忘れ、我が業として、遣り返すときだよ。
サトミ 苦が消える、煉獄って、どういうものかな?
メグミ 煉獄とは、悪業を摘んで、罪を浄める獄だよ。
サトミ どうすると、煉獄の世界に、落ちていくの?
メグミ 苦しもうとも、苦しめないと、考えるとだね。
サトミ 業の連鎖が、断ち切れると、罪が消えるの?
メグミ 違う道を、潔く択んだら、罪が許されるのよ。
サトミ どうすれば、業の連鎖から、抜け出せるの?
メグミ 我を忘れ、神の業として、受け容れるときよ。
サトミ 神を忘れて、業を重ねると、罪を犯すけど、
我を忘れ、業を落とせば、罪が許されるのね。
メグミ うふっ、煉獄を通して、地獄は天国になるの。
サトミ ……………………!!
CASE 煉獄 という 地獄
サトシ 悪人なんて、懲らしめて、根絶やしにしよう!
マサシ そういう君は、地獄の世界、知っているかい?
サトシ 勿論さ、獄卒が、獄囚を懲らしめる世界だよ。
マサシ それなら、どちらが、地獄の住人か解るかい?
サトシ そんな、懲罰を受ける、獄囚に決まっている。
マサシ 実は、懲罰を与える、獄卒も地獄の住人だよ。
サトシ 嘘だよ、どうして、そんなことが言えるわけ?
マサシ 獄卒から、懲罰を受けると、どうなると思う?
サトシ 獄囚は、悪業を摘むから、地獄を抜けられる。
マサシ 獄囚らに、懲罰を与えると、どうなると想う?
サトシ 獄卒は、悪業を積むから、地獄に落とされる。
マサシ ほら、獄卒と獄囚の立場が、逆転してしまう。
ここで、恨みを晴らすと、どうなってしまう?
サトシ 元獄囚が、新獄卒と成って、懲罰を与えて、
元獄卒らが、新獄囚と為って、懲罰を受ける。
マサシ その通り、遣られたら遣り返す、報復の連鎖。
これを、永遠に繰り返すのが、地獄の実態さ。
サトシ 嘘だ、これを認めたら、悪を押えられないよ。
マサシ ほらね、もうすでに、君も地獄の住人なのさ。
サトシ ……………………
CASE 地獄 という 煉獄
サトシ 刑に服する、獄囚って、どういうものかな?
マサシ 獄囚とは、地獄の住人で、罰を受けるものさ。
サトシ 令に従がう、獄卒って、どういうものかな?
マサシ 獄卒とは、地獄の住人で、罰を与えるものさ。
サトシ 獄卒を憎み、罰を受けると、どうなるのかな?
マサシ いつしか、遣り返して遣ると、根に持つのさ。
サトシ 獄囚を憎み、罰を与えると、どうなるのかな?
マサシ いつしか、為す事が為される、罪を犯すのさ。
サトシ う~ん、これでは、立場が入れ替わるだけで、
誰も、地獄の罠から、永遠に抜け出せないよ。
マサシ そうさ、我を介すから、獄に嵌り込んでいく。
逆に、獄を抜け出すには、神を介すしかない。
サトシ 我を忘れて、神を覚えると、どうなるのかな?
マサシ 獄囚は、神の試練と捕え、獄卒を恨まない。
獄卒らは、神の使命と捉え、獄囚を憎まない。
サトシ そっか、我を忘れるほど、苦が苦に為らない?
マサシ うん、苦しみに捕らわれず、罪を重ねない。
サトシ 地獄が、苦の中で苦を浄める、煉獄に変わる?
マサシ うん、苦の中で苦を強める、地獄が終わるよ。
サトシ ……………………!!
CASE 煉獄なき地獄 と 地獄なき煉獄
サトミ 地獄と煉獄、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 業を重ねる、地獄って、どういうものかな?
メグミ 地獄とは、敵を恨むから、敵が増えることよ。
サトミ 業を浄める、煉獄って、どういうものかな?
メグミ 煉獄とは、敵を許すから、敵が消えることよ。
サトミ 地獄を望み、煉獄に臨まないと、どうなるの?
メグミ 煉獄なき地獄なんて、唯の投獄に過ぎないよ。
サトミ じゃ、敵を憎むばかり、敵が増えるだけなの?
メグミ そうよ、足を引き合って、抜け出せなくなる。
サトミ 煉獄を望み、地獄に臨まないと、どうなるの?
メグミ 地獄なき煉獄なんて、只の脱獄に過ぎないよ。
サトミ じゃ、敵を許すばかり、敵が消えるだけなの?
メグミ そうよ、手を取り合って、脱け出してしまう。
サトミ 地獄だけは、牢が無くても、抜け出さないし、
煉獄ばかりは、獄が有っても、脱け出せるの?
メグミ うん、地獄と煉獄、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、煉獄を通し、地獄を透していくの?
メグミ そうなの、地獄を超え、煉獄を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 地獄 と 天獄 と 煉獄
サトシ 悪を封じる、地獄って、どういうものかな?
アツシ 地獄とは、悪を削ぐため、獄に入ることだな。
サトシ どうすると、苦に苛まれる、地の獄に入るの?
アツシ 我が為に、悪を積むとき、苦に飽いてしまう。
サトシ 善を封じる、天獄って、どういうものかな?
アツシ 天獄とは、善を削ぐため、獄に入ることだな。
サトシ どうすると、楽に苛まれる、天の獄に入るの?
アツシ 我が為に、善を積むとき、楽に飽いてしまう。
サトシ 我を封じる、煉獄って、どういうものかな?
アツシ 煉獄とは、我を削ぐため、獄に入ることだな。
サトシ どうすると、業に苛まれる、煉の獄に入るの?
アツシ 神の為に、悪を積むとき、我に飽いてしまう。
サトシ 我がために、積んだものは、自ら償うけど、
神様のために、積んだものも、我が償うんだ。
アツシ 神の為でも、我が積むなら、我が罪になるが、
我を忘れ、神に尽したら、それが喜びになる。
サトシ 心の底から、神の為ならば、獄に入ろうと、
我が無いから、削がれた処で、痛くない訳か。
アツシ その通りだ、獄を抱いても、神に会うだろう。
サトシ ……………………!!