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物語編

第五章 第五九話 対話編

CASE 私戦 の裏に 義戦

 

マナミ ねぇ、キタール、私戦は、どういうものなの?
マサシ 私戦とは、我がために、敵と戦うことなのさ。
マナミ 我がために、敵と闘うと、どこに生まれるの?
マサシ 我がため、苛められる、地獄に産まれるのさ。
マナミ 我がために、戦うときは、許し合えないの?
マサシ そうだよ、私怨が有るから、罪が増えるのさ。
マナミ じゃ、ジハード、義戦は、どういうものなの?
マサシ 義戦とは、神のために、敵と戦うことなのさ。
マナミ 神のために、敵と闘うと、どこに生まれるの?
マサシ 神のため、虐められる、煉獄に産まれるのさ。
マナミ 神のために、戦うときは、赦し合えるのかな?
マサシ そうだよ、私怨が無いから、罪が消えるのさ。
マナミ つまり、我が為に戦えば、我が為に愛せず、
    その逆に、神の為に闘えば、神の為に愛せる?
マサシ 私戦は、相互に憎むから、応報が続くだけ。
    義戦なら、相互に許すから、朗報が届くのさ。
マナミ たとえ、神の為であると、謳っていようと、
    敵を憎み、戦い続けるなら、騙っているのね。
マサシ 敵を愛する、果が生じるまで、煉獄の中だよ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 私戦 の先に 義戦

 

サトミ 我を掲げる、私戦って、どういうものかな?
メグミ 私戦とは、我が望むから、敵と戦うことだよ。
サトミ 我がために、敵を損なうと、どうなるのかな?
メグミ 我に捕われて、悪が返るとき、苦しめられる。
サトミ 神を揚げる、義戦って、どういうものかな?
メグミ 義戦とは、神が望むから、敵と戦うことだよ。
サトミ 神のために、敵を害なうと、どうなるのかな?
メグミ 我に囚われず、悪が返るとき、苦しまないよ。
サトミ そうすると、私戦にしても、義戦にしても、
    どちらも、敵を苦しめるから、悪業を積むの?
メグミ その通りよ、敵から見れば、動機は関係ない。
    苦しめたなら、苦しめられる、果報で返るよ。
サトミ 動機が異なると、受け取り方が、変わるのね。
メグミ うん、我が為なら、我が為に、苦しむけど、
    反対に、神の為なら、我が為に、苦しまない。
サトミ じゃ、神の為なら、敵を憎んだら、ダメだね。
メグミ そうよ、憎悪なんて、我が為に他ならないよ。
サトミ うん、後で苦しむのは、あたしは嫌だからね。
メグミ うふっ、そう考えるのは、すでに我が為だよ。
サトミ ……………………

 


 

CASE 私戦 という 義戦

 

サトシ 個を訴える、私戦って、どういうものかな?
アツシ 私戦とは、私憤に駆られ、敵と戦うことだな。
サトシ 私憤に耽り、敵を危めると、どうなるのかな?
アツシ 酔った分だけ、我が業として、後に報われる。
サトシ 公を訴える、義戦って、どういうものかな?
アツシ 義戦とは、義憤に駈られ、敵と戦うことだな。
サトシ 義憤に溺れ、敵を害すると、どうなるのかな?
アツシ 酔った分だけ、我が業として、後に酬われる。
サトシ そうすると、我が為にせよ、義の為にせよ、
    拠った分だけ、我が業として、積み重なるの?
アツシ その通りだ、個の為にせよ、公の為にせよ、
    漏れなく、報いたことは、酬いられてしまう。
サトシ そうなると、私憤と義憤は、何が違うのかな?
アツシ 個の為ならば、酬いに捕われ、苦しめられる。
    公の為なら、酬いに囚われずに、苦しまない。
サトシ 義のためでも、楽には為らず、苦しむだけか。
アツシ 危められる、敵から見れば、不義だからだな。
サトシ それなら、正義の戦いなんて、損なだけだよ。
アツシ 確かに、そんな義戦ならば、私戦だからだな。
サトシ ……………………

 


 

CASE 義戦なき私戦 と 私戦なき義戦

 

サトミ 私戦と義戦、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 我を揚げる、私戦って、どういうものかな?
メグミ 私戦とは、我が名の下に、敵と戦うことだよ。
サトミ 義を掲げる、義戦って、どういうものかな?
メグミ 義戦とは、神の名の許に、敵と闘うことだよ。
サトミ 私戦を望み、義戦に臨まないと、どうなるの?
メグミ 義戦なき私戦なんて、唯の敗戦に過ぎないよ。
サトミ じゃ、我を揚げようと、義を掲げないのかな?
メグミ そうよ、義が無かったら、勝ちが続かないよ。
サトミ 義戦を望み、私戦に臨まないと、どうなるの?
メグミ 私戦なき義戦なんて、只の不戦に過ぎないよ。
サトミ じゃ、義を掲げようと、我を揚げないのかな?
メグミ そうよ、我が無かったら、戦いが始らないよ。
サトミ 私戦だけでは、敵に勝って、己に敗けるし、
    義戦ばかりでは、己に克って、敵が居ないの?
メグミ うん、私戦と義戦、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、義戦を究め、私戦を極めていくの?
メグミ そうなの、私戦を超え、義戦を越えていくの。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 聖戦 の裏に 克己

 

マナミ ねぇ、ジハード、奮闘は、どういうものなの?
マサシ 奮闘とは、神の道に於いて、努力することさ。
マナミ 小ジハード、聖戦って、どういうものなの?
マサシ 聖戦とは、外に表われる、邪魔と戦うことさ。
マナミ 聖戦が、小さな努力なのは、どうしてなの?
マサシ 我が責を、他の責として、捕えているからさ。
マナミ 外なる敵と、戦っていると、どうなるのかな?
マサシ そのうち、戦いに疲れて、我に返る時が来る。
マナミ 大ジハード、克己って、どういうものなの?
マサシ 克己とは、内に現われる、邪魔と闘うことさ。
マナミ 克己が、大きな努力なのは、どうしてなの?
マサシ 他の責を、我が責として、捉えているからさ。
マナミ 内なる敵と、闘っていると、どうなるのかな?
マサシ そのうち、闘いに疲れて、神に還る時が来る。
マナミ たとえ、歪んでいても、神を望んでいれば、
    自ずから、正されていき、神に臨んでいくの?
マサシ そうさ、外から内へと、神に還っていくのさ。
マナミ 初めから、神に向かえば、戦わなくて良いの?
マサシ それは、疲れ切った人しか、分からない事さ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 聖戦 の先に 克己

 

サトミ さあ、聖戦よ、神の名の下に、抹殺しましょ!
メグミ う~ん、止めよ、神様のために為らないから。
サトミ 嘘よ、悪魔を滅ぼすのは、神様のためだもん。
    神様も、悪魔のことなんて、大嫌いなはずよ。
メグミ ホントに、魔を滅し尽せると、思っているの?
    次から次に、生まれて来て、泥沼に嵌まるよ。
サトミ どうして、そんなことが、言えてしまうの?
    ひとつずつ、潰していけば、滅ぼせるはずよ。
メグミ 悪魔の本体は、外ではなくて、内にこそいる。
    魔の元凶と、闘わない限り、湧き続けるのよ。
サトミ それなら、悪魔の正体は、我が悪しき心なの?
メグミ そうよ、それを認めず、外を潰して行っても、
    魔が、内に残り続けると、外に現れ続けるよ。
サトミ つまり、外の敵を見て、魔と思う心こそが、
    闇の、元凶であって、悪魔の正体だったわけ?
メグミ そうよ、内の魔が映る、外の敵を潰すほど、
    内の魔が、膨れ上がって、外の敵が増えるよ。
サトミ 魔を憎むと、魔が養われる、仕掛だったのね。
メグミ 魔を認めれば、魔が憑かない、仕組だったの。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 聖戦 という 克己

 

サトシ さあ、聖戦だ、神の名の下に、自爆するぞ!
    神様の為に、死んだ者は、天国に行けるんだ。
マサシ 君は、天国に行きたいから、奮闘するのかい?
サトシ 天国は、美女に囲まれて、良い事ばかりだよ。
    苦しみの、人間の世界から、脱け出せるんだ。
マサシ すると、神様のためだと、君は言うけれど、
    結局の処、自分のためだし、欲のためだよね?
サトシ ううん、神様のためだよ、嘘じゃないって。
マサシ 仮に、神様のためでも、天国には行けないよ。
    敵でも、苦しませるなら、地獄に逝くだけさ。
サトシ うそだよ、天国に行けると、僕は聞いたもん。
マサシ 我が為なら、地獄に堕ちると、苦しいけど、
    神様の為なら、地獄に落ちても、苦しくない。
サトシ そうすると、聖戦で自爆して、天に行くって、
    その身は、地獄に堕ちても、心は落ちないの?
マサシ そうさ、地獄で神と共に在る、素適な話だよ。
サトシ 嘘だ、地獄に落ちるなんて、冗談じゃないよ。
    僕らは、天国に行きたいから、志願したんだ。
マサシ 結局の所、自分のためだし、欲のためだよね?
サトシ ……………………

 


 

CASE 克己なき聖戦 と 聖戦なき克己

 

サトミ 聖戦と克己、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 彼らと戦う、聖戦って、どういうものかな?
メグミ 聖戦とは、神の旗の許に、外と戦うことだよ。
サトミ 自らと闘う、克己って、どういうものかな?
メグミ 克己とは、神の名の下に、内と闘うことだよ。
サトミ 聖戦を望み、克己に臨まないと、どうなるの?
メグミ 克己なき聖戦なんて、唯の好戦に過ぎないよ。
サトミ じゃ、外と戦うだけで、内と闘わないのかな?
メグミ そうよ、我に滅ぼされて、神が消えるだけよ。
サトミ 克己を望み、聖戦に臨まないと、どうなるの?
メグミ 聖戦なき克己なんて、只の厭戦に過ぎないよ。
サトミ じゃ、内と闘うだけで、外と戦わないのかな?
メグミ そうよ、敵に滅ぼされて、我が消えるだけよ。
サトミ 聖戦だけでは、神を騙って、我に敗けるし、
    克己ばかりでは、己に勝って、敵に負けるの?
メグミ うん、聖戦と克己、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、克己に依り、聖戦に拠っていくの?
メグミ そうなの、聖戦を究め、克己を極めていくの。
サトミ ……………………!!

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