第五章 第六十話 対話編
CASE 最善 の裏に 最悪
マナミ 最も善いこと、最善って、どういうものなの?
マサシ 最善とは、欲を持って、望んでいる善なのさ。
マナミ 最も悪いこと、最悪って、どういうものなの?
マサシ 最悪とは、欲を以って、臨んでいく悪なのさ。
マナミ う~ん、良く解からない、どういうことなの?
マサシ 誰も、欲を持っているから、善を求めている。
マナミ つまり、悪を求めている、人なんて居ないの?
マサシ うん、より良い善を求めて、善と善を比べる。
そして、良い方を選んで、悪い方を捨てるよ。
マナミ それなら、それを続ければ、最善に成らない?
マサシ 為らないよ、どの善が最善か、解らないから、
他の善と、永遠に争い合う、罠に嵌まるのさ。
マナミ ずっと、競い合うなんて、限界が来ないの?
マサシ 種として、進退が問われる、最終戦争が起る。
マナミ 必ず訪れる、最終戦争は、どういうものなの?
マサシ 最善を懸けて、善と善が争う、最悪な戦いさ。
マナミ 最善を望み、最悪に臨む、最悪な仕掛けね。
これって、最悪に臨む前に、気づけないかな?
マサシ 気づけたら、最善なのさ、ということはだね。
マナミ ……………………
CASE 最善 の先に 最悪
サトミ 欲を究める、最善って、どういうものかな?
メグミ 最善とは、頂に到るまで、欲が重なることよ。
サトミ 誰でも、良くを持って、最善を望んでいくの?
メグミ 欲を抱き、意識的に、善を突き詰めていくの。
サトミ 善を比べて、良い方を、意識的に重ねるの?
メグミ うん、だから、意識的に、善く成っていくよ。
サトミ 欲が窮まる、最悪って、どういうものかな?
メグミ 最悪とは、底に着くまで、欲が重なることよ。
サトミ 誰でも、良くを以って、最悪に臨んでいくの?
メグミ 欲を擁き、無意識に、善を切り捨てていくの。
サトミ 善を較べて、悪い方を、無意識に重ねるの?
メグミ うん、だから、無意識に、悪く為っていくよ。
サトミ 欲を持って、善を比べると、その瞬間から、
最善と最悪を、味わう未来が、決定するのね。
メグミ 意識し、善を積み上げる、最善を味わうと、
無意識に、善が崩れ落ちる、最悪を味わうよ。
サトミ そっか、上がった分だけ、落ちてしまうんだ。
最悪、その覚悟が無いまま、最善を望めない。
メグミ うふっ、その覚悟こそが、最善の悟りなのよ。
サトミ ……………………!!
CASE 最善 という 最悪
サトシ 善を明める、最善って、どういうものかな?
アツシ 最善とは、確められない、最たる善のことだ。
サトシ 最たる善と、認めないのは、どうしてなの?
アツシ 良くには、限界が無くて、収まらないからだ。
サトシ 善を諦める、最悪って、どういうものかな?
アツシ 最悪とは、確かめられる、最たる悪のことだ。
サトシ 最たる悪と、見とめるのは、どうしてなの?
アツシ 飽くには、限界が有って、押さえたいからだ。
サトシ つまり、欲は無限でも、徳は有限であるから、
絶対、最善は味わえずに、最悪だけ味わうの?
アツシ そうだ、最善を味わうのは、絶対に出来ない。
サトシ そうかな、そんな結論は、最善じゃないよ。
もっと、突き詰めたら、可能になるはずだよ。
アツシ いや、突き詰めなくても、原理的に不可能だ。
サトシ ううん、その結論なら、欲の世界は最悪だよ。
絶対、突き詰めれば、欲の世界は最善になる。
アツシ そんな、君が居てこそ、欲の世界が存在する。
サトシ 僕の様な、人が居ないと、存在できないの?
アツシ そうだ、諦めが良すぎると、誰も居なくなる。
サトシ ……………………
CASE 最悪 という 最善
サトシ 希望を司る、最善って、どういうものかな?
アツシ 最善とは、欲望の世界を、維持するものだな。
サトシ 誰でも、最善を望んで、人の世に生まれるの?
アツシ そうだな、善悪に塗れて、神の界を追われた。
サトシ 絶望を司る、最悪って、どういうものかな?
アツシ 最悪とは、欲望の世界を、破壊するものだな。
サトシ 誰でも、最悪に臨んで、神の世に生まれるの?
アツシ そうだな、善悪を越えて、人の界を終われる。
サトシ つまり、希望を持って、人の世に生まれて、
そのうち、絶望を以って、神の界に帰るのか。
アツシ そうだ、最善を追って、人の世に産まれて、
そのうち、最悪を負って、神の界に還るんだ。
サトシ 確かに、味わえるのは、最悪に限られるけど、
それこそ、神の界に帰る、保証に成っている。
アツシ 好きなだけ、行って来いと、言われていて、
嫌になったら、戻って来いと、云われている。
サトシ いつだって、構わないなら、気が楽になるね。
そう考えると、もうしばらく、活きようかな。
アツシ そう思えば、この人の世も、最悪じゃないな。
サトシ ……………………!!
CASE 最悪なき最善 と 最善なき最悪
サトミ 最善と最悪、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 欲を究める、最善って、どういうものかな?
メグミ 最善とは、意識的に、欲を突き詰めたものよ。
サトミ 欲が窮まる、最悪って、どういうものかな?
メグミ 最悪とは、無意識に、欲が切り捨てたものよ。
サトミ 最善を望み、最悪に臨まないと、どうなるの?
メグミ 最悪なき最善なんて、唯の最悪に過ぎないよ。
サトミ じゃ、最善を追うけど、最悪を負わないの?
メグミ そうよ、最悪を負うまで、最悪に被われるよ。
サトミ 最悪を望み、最善に臨まないと、どうなるの?
メグミ 最善なき最悪なんて、只の最善に過ぎないよ。
サトミ じゃ、最悪を追うけど、最善を負わないの?
メグミ そうよ、最善を負うまで、最善に覆われるよ。
サトミ 最善だけでは、悪に備えず、悪に襲われて、
最悪ばかりでは、善に供えず、善に教わるの?
メグミ うん、最善と最悪、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、最悪を究め、最善を極めていくの?
メグミ そうなの、最善を超え、最悪を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 最 終 戦 争
マサシ 君は、最終戦争って、何と何の戦いだと思う?
サトシ 誰でも、知っているよ、光と闇の闘いだね。
即ち、終末に掛けた、天使と悪魔の戦いだよ。
マサシ 違うよ、最善を懸けた、天使と天使の闘いさ。
善と善の、戦いこそ、実に、最悪だったのさ。
サトシ おかしいよ、どうして、天使と天使が闘うの?
マサシ 悪魔とは、堕天使であり、神が愛した者だよ。
サトシ それは、昔の話だから、今は唯の神の敵だよ。
マサシ こうして、我だけ善いと、独善に嵌まるから、
在り得ない、絶対善を、何とか繕おうとする。
サトシ 絶対善は、絶対ないから、神を持ち出して、
絶対の神を、独占するため、戦い続けるわけ?
マサシ そうだよ、我が欲のため、神様を使うから、
極悪な罪が、積み重なって、最悪に至るのさ。
サトシ どちらも、神のためって、戦っているけど、
実際の処は、我がためって、最悪な仕掛だね。
マサシ 独善の仕組に、気づくための、最終戦争だよ。
サトシ こんなこと、どうして君は、もう気づいたの?
マサシ 後進のために、堕天使として、今回は戦うよ。
サトシ ……………………