物語編
第六章 第一話 物語編
第六章 投射 と 反射
第一話 時に表れる業 と 場に現れる業
智徳は、精鋭を率いて、法徳の居城に向かった。
他でもない、それは、最悪の時を避ける為である。
城門に着くと、門衛に近づき、佇まいだけで訴えた。
「王の命に従う者たちよ、神の命に順うが良い。
このまま、我ら神の使いを、王の前に連れて行け。
如何なる物も、如何なる者も、神の言葉を遮れない。」
門衛の中に、嘲う者も居たが、察する者も居た。
神に導かれる者たちを、押し止どめる法はないと、
彼は、突き動かされるように、彼らを城内に導いた。
いまや、帝国の隅々まで、怨嗟に覆われていた。
その元凶を創った者が、悠然と城に現れたという。
自ら判断が出来ない者は、決して穏やかに為れない。
催眠に掛かったが如く、城内が騒然とし出した。
その中で只一人だけ、冷静に事態を見る者がいる。
彼は、片割が近づくのを見て、玉座から降り立った。
『二度と来ないでくれと、言っておいたはずだ。
我が師よ、今度は何の積もりで、我が前に現れた。
覚めた夢に、再び酔えるほど、私は愚かにはなれぬ。』
「法徳よ、我らは、二千年の軛を外しに現れた。
天の命に従い、神の子を屠り、新たな時代を拓け。
白羊宮から、双魚宮に至るため、贖罪の山羊が要る。」