物語編
第六章 第二話 物語編
第六章 因業 と 修業
第二話 業を重ねる業 と 業を越える業
『ご自身で、何を言われているのか、ご存知か。
神命を享けて、神児を屠れとは、如何なる所業か。
私には徒に、宿命に流されている、としか思えない。』
『我が師よ、あなたも、良く覚えて居られよう。
我が生は、聖師を殺めた、原罪を負わされている。
以来、現在に至るまで、一時も心が休まる事がない。』
『わたしが、あなたに師事し、法を継いだのは、
ひとえに、此の消しがたい、罪を越えたいがため。
それを、同じ罪を犯かせとは、我が信を越えている。』
『畏れながら、師が狂われたかに、私は見える。
言うなれば、昔の師が見とめた、昔の私に見える。
民意に押し流され、天意を取り逃した、迷える子羊。』
『ああ、運命とは、斯くも、悲惨なものらしい。
人と人は、逆になり跳ね返り、対になり繰り返す。
天の命には、誰も逆らえないと、既に決っていたか。』
『これが、業に狂わされた、師の狂気ではなく、
まさに、業を越えるため、天の勝機というのなら、
師よ、私が信じるに値する、天の証を示して頂こう。』