物語編
第六章 第四話 物語編
第六章 自我 と 他我
第四話 意志が伝わる と 意思を伝える
『危うい、我が師よ、実に、危ういではないか。
確かに、神の命に従えば、我が心は安らぐだろう。
だが、その裏に潜む危さを、お忘れではあるまいな。』
『元より、善と悪は、我を介し、生まれるもの。
確かに、我を忘れ、神に委ねれば、善悪が消える。
其処には、善もなく、悪もない、歓喜の園が広がる。』
『しかし、報いれば酬われる、絶対の神の意思。
たとえ、神の為に成そうと、積んだ罪は必ず詰む。
もし、光の子を屠るなら、無間の闇に落ちるだろう。』
『それを、神の本懐と、思い込めれば未だ良い。
しかし、神の世界に、覚めない夢など何一つ無い。
業は、跳ね返して繰り返し、詰まる如く積んで行く。』
『人は神を騙るもの、人は神を語るべきでない。
師が神を騙るのならば、私も神を騙らせてもらう。
我が師よ、師の子の言を、神の子の言として、聴け。』
『智徳よ、我らは、二千年の軛を外しに現れた。
天の命に従い、汝の命を屠り、新たな時代を拓け。
白羊宮から、双魚宮に至るには、裏切の弟子が要る。』