物語編
第六章 第七話 物語編
第六章 宗教 と 科学
第七話 信じる者の道 と 迷える者の道
老婆の体から、異臭が放たれ、膿が垂れていた。
彼女は何も話さなかったが、眼に涙が溢れていた。
彼女の目は、ほとんど見えず、しかも、片目だった。
膿を拭き取ろうと、老婆の身体を布で撫でると、
膿の下から血が滲み、斑の模様が浮かび上がった。
業病を患っている事が、誰の目にも明らかであった。
私は、汚いと思うよりも、哀れみが湧き上がり、
彼女の業を、少しでも、肩代わりしたいと願った。
その瞬間、彼女の痛みが、少し和らいだかに見えた。
彼女は、水も飲めないほど、弱り切っていたが、
白湯から始め、口に出来るものを増やして行った。
すると、徐々に、滋養の有る物を取れる様になった。
最初は、苦しみの余りに、心を閉ざしていたが、
私の思いが通じたのか、次第に心を開いてくれた。
すると、次第に、受け答えが返って来る様になった。
先ず、感激の涕涙が、頬を伝わり流れるように。
続いて、感謝の言葉が、舌を通して溢れるように。
最後には、感喜の微笑が、口に零れるようになった。