物語編
第六章 第八話 物語編
第六章 思惟 と 行為
第八話 内を観る哲学 と 外に現る哲学
彼女は、体が癒されて、心の壁が崩れていくと、
私に、過去のことを、打ち明けるまでに変わった。
それは、懺悔となって、彼女を内から治して行った。
彼女は、小さい頃から、目を引いて可愛かった。
両親からも、周囲からも、甘やかされ育ったため、
愛される事が、当然になり、感謝を学ぶ機を逃した。
類が友を呼び、心を伴わない者が集まり始めた。
その関係の中で、上辺だけの付き合いが多くなり、
快楽や金銭だけを求めて、彼女の心は荒んで行った。
そして、快楽に溺れ切って、麻薬に手を出した。
先に、気持ち良くなると、後から気持ち悪くなる。
苦しみから逃げるため、次々に、手を出して行った。
繰り返す薬のため、豊かなはずが、貧しくなり、
困窮した彼女は、結婚の詐欺を、働く様になった。
人々の幸福を、不幸に変えて、麻薬を買ったわけだ。
騙された男の中には、自殺した者も居るらしい。
彼女は、漸く良心が目覚め、心から悔やんでいた。
私も、その懺悔を聞いて、どちらも不憫だと思った。
当然、被害者に対して、憐れみが生じてくるが、
長い目で見れば、加害者にも哀れみしか招じない。
この欲の界は、一切皆苦であり、悲哀の対象だった。