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物語編

第六章 第九話 物語編

第六章   放棄   と   放擲
第九話 何も行わない と 何も縛らない

 

彼女は元気になったが、命数が尽きて来ていた。
もう、体を起こす事も出来ない、死の床にあって、
涙を流しながら、そして、微笑みを浮かべて言った。

 

心を亡くした私が、笑顔を取り戻せたことは、
貴方のおかげです、この恩を心に深く刻み込んで、
貴方に会う時は、いつでも笑顔で居たいと思います。

 

もうじき、私は、この命が尽きるでしょうが、
いつでも、貴方を支えるため、生れ変りましょう。
たとえ、擦れ違うだけでも、命に代え支えましょう。

 

この生で学んだことを、無駄には致しません。
貴方に対する恩返しとして、常に忘れることなく、
私の汚点を美点に変えて、遍く世界に伝えましょう。

 

今後、決して、悦楽に耽ることは有りません。
今生、享楽の先に、困難が待つことを悟りました。
この先、快楽を究め、苦痛を極める、私は居ません。

 

今後、断じて、優美を誇ることは在りません。
今生、美麗の下に、醜悪が潜むことを悟りました。
この先、若さを誇り、老いに怯える、私は居ません。

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