物語編
第六章 第十一話 物語編
第六章 善性 と 暗性
第十一話 原因を司る性 と 結果を司る性
[あなたが、通り掛かったのは、この時でした。
あなたは、私を家に連れ帰り、手当をしてくれて、
私には、身も心も癒されて、猶予が与えられました。]
[私は静かに、自分の人生を、心から振り返り、
我が欲のために、生きたことを、悔い改めました。
結局の処、欲望は虚しさしか、齎さなかったのです。]
[自我が滅び、虚無の地に、消え去る其の瞬間、
菩薩の光で、私は蘇えり、欲界に戻って来ました。
同じ処ですが、一切皆空と、見える様に為りました。]
[更に、菩薩の慈悲である、貴方の心に触れて、
私も、菩薩の道を進みたいと、夢まで持てました。
我が為ではなく、他の為に欲を持つ、利他の道です。]
[あらゆるものは、実体など無い、空ですから、
すべて苦しいと、思って来たことと、同じように、
すべてが楽しいと、想って行くことが、出来るはず。]
[他の為に生きれば、欲界ほど嬉しい処はない。
欲を持って、徳を磨けば、輪廻こそが涅槃になる。
同じ処ですが、一切皆楽と、見える迄に成りました。]